春。3月20日、雪が残った木の枝で、小鳥がすきとおった声でうたう。 2日後にはクロッカスが顔をのぞかせ、だんだん雪がとけて、どろどろ・ぐちゃぐちゃ。 4月12日。雨がぽつぽつふりはじめる。27日にはマグノリアがきれいに咲き、5月には雨雲。 6月、ふりそそぐ光のなかでハチがぶんぶん飛びまわる……。
季節は夏へ。 7月、夏の海辺でたべるしょっぱいピーナッツバターサンドとプラム。 9月、秋の風を感じてきゅうに恋しくなるセーター。 そして秋から冬へ。 12月の冬のはじまり。 1月、あたたかい部屋でクッキーをかじりながらゆっくりとミルクを飲むしあわせ……。
何でもない春夏秋冬の日々の一瞬のきらめきを、うつくしい言葉で描いた詩の本です。 3月20日からはじまり、次の3月20日で終わるまでの1年間、日付を刻みながら四季の宝物のようなできごとがあざやかに描かれます。
詩を書いたジュリー・フォリアーノはアメリカ、ハドソン・バレー在住。夫や3人の子どもとの生活の中から生まれた作品を書き続けています。主な作品にエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞した『あ、はるだね』などがあります。 絵を描いたジュリー・モースタッドはカナダ、バンクーバー在住のイラストレーター。『スワン アンナ・パブロワのゆめ』などの作品があります。
本書は石津ちひろさんの訳。少女のわくわくする心やちょっとした憂鬱さ、しんとした気持ちや居心地のよさを織り込んだ、軽やかな訳詩の数々に引き込まれます。 内容は決してむずかしくありませんが、漢字が使われているので、ぜひ大人が声に出してすこしずつ読んであげたい作品です。 耳から入ってきたみずみずしい詩は、幼い心の中にも四季の地図を広げ、繊細なきらめきをキャッチするアンテナを育ててくれるはずです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
春の訪れを教えてくれる、一羽の小鳥。夏の海べで食べる、しょっぱいピーナッツバターサンド。秋の風を感じて、きゅうに恋しくなるセーター。冬の日あたたかい部屋でゆっくり過ごすしあわせ。──なんでもないふつうの日の、トクベツな一瞬のきらめきを、女の子のまっすぐな目でみつめ、日記に書き留めたような詩が48編。翻訳を手がけたのは、巧みな言葉遊びでも知られる、詩人の石津ちひろさん。原詩の世界感をそこなうことなく、うつくしい日本語におきかえた。ずっと眺めていたくなる、季節の詩情あふれる絵とともに、大切な宝物になりそうな一冊。
「くじらにあいたいときは」で好きになったジュリー・フォリアーノの詩なので、読んでみました。1年をとおして、日記のようにつづられる詩。主人公の女の子の視点で書かれている詩に、何度もはっとしながら読みました。季節折々に読み直したいです。絵も素敵なので、プレゼントにいいな、と思いました。 (あんじゅじゅさん 50代・その他の方 )
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