今から三百六十年ほど昔。災害から村と村人たちを救うために立ち上がった、庄屋の一族がいた。のどかな村を取り囲むように流れる意宇川。日ごろは村の民に幾多の恵みを与える川も、大きな岩山が張り出し、水の流れは曲がりくねり、流れが細くなっている場所があったため、一度大雨に見舞われると、川の流れは濁流となり、村を呑み込んだ。家屋は流され、多くの人命が失われ、村は壊滅寸前となった。災害におびえる村人たちを目にして、生涯をかけて岩山と格闘する決意をした庄屋、周藤彌兵衛。「村の民の幸せがなければ、庄屋の幸せはない」との思いから、身代をかけて、岩山に挑むこと、実に四十二年。現代社会にも通じる彌兵衛の願いとは、精神とは、行動力とは…。
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