ドキドキわくわく、職場体験! 駅で電車を間近にお仕事? 保育園で子どもたちのお世話? ところがなんとぼくらがいくのは、志望とちがう「博物館」!?
博物館って、なんか地味…… いつきても同じものが展示されてるし、美術館のほうがオシャレだし…… それに理科とか苦手だし、そもそもどんな仕事があるの?
博物館での職場体験に、不安と不満がいっぱいの5人の中学生。 そのうえ、誰がどの部署をたずねるのかもクジ引きで決まってしまい、ますます混乱! 「魚類」、「鳥類」、「哺乳類」はいいとして…… 「古脊椎」に「無生物」って、なに——!?
「ヴンダーカンマー」 「奇跡の部屋」、「驚異の部屋」を意味するそれは、かつて貴族や学者たちがつくったコレクションの陳列室。 いわば、博物館の大元!
博物館って、だれもが一度は訪れたことがあるのに、そこで働く人々がふだんどんなことをしているのかって、あんまりピンときませんよね。 本書は、現代のヴンダーカンマー、「博物館」で職業体験をすることになった5人の中学生の1日をそれぞれの視点から描き出し、博物館をふだんとはちがう角度からたのしませてくれる作品です。
個性的な5人のキャラクターがおとずれる「博物館の裏側」には、おどろきがいっぱい!
漁師さんから電話をもらって、いそいで漁港に車を飛ばす! みんな大好き、某ファストフードのフライドチキンを食べまくる! 畑を荒らすイノシシ対策、モグモグ戦隊ブラウンレンジャー!? 博物館のお仕事小説として、バツグンにたのしい一冊です。
また、作品全体を通して、「名前」が重要なキーワードになっているのも印象的。
「日頃、わたしたち学芸員が尊重しているのは「個」よりも「種」なんです。カピバラでいったら、ネズミ目テンジクネズミ科カピバラ属という種を見て仕事をしている。そこに名前が付くと、種よりも個が強調される。名前が付いた瞬間に種は個になるんです」
ハカセというあだ名で呼ばれ、みんなから”博士らしい”キャラクターを期待されている男子。 クラスメートとの間に壁をつくり、みんなを「クラスの誰か」としか見ていない女子。
博物館で働く人々の目を通して「名前」というものの意味と価値について学んだ5人の気持ちの変化に、大人もまた深く共感できるはず。
奇跡と呼ぶにはささやかな、それでいてかけがえのない「奇跡の部屋」でのその一日に、彼らはどんな名前をつけるのでしょう?
(堀井拓馬 小説家)
中学生男女5人の一日職場体験記。希望と違う体験先に行くことになった5人は、くじ引きで魚類、鳥類、哺乳類、古脊椎などに分かれて各部の仕事を手伝う。博物館に関わる個性的な大人を観察したり、館内で他の部とシンクロしたりしながらゆるゆると流れる時間。
魅惑の宝庫(ヴンダーカンマー)を垣間見て、知らない自分を発見したり友だちに出会ったり……。それはモヤモヤした日常に光が射しこむような特別な一日になるのだった。
編集者コメント デビュー作やその後の作品で新人賞を多く受賞した作家の五年ぶりの新刊。同時進行の一日を中学生5人の視点から切り取る作品です。
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