メールやアプリ、SNSで、情報のやりとりをする現在。 そんなテクノロジーの波とはいまだ無縁の「クジラ海」では、ペリカン配達員や新米配達員のザラシーくんたちが、今日もせっせと手紙を配達中。
手紙なんて、手間もかかるし時間もかかる。 既読かどうかもわからない! でも、ここクジラ海ではいつも、一通の手紙から物語ははじまるのです——
主人公は、ほんとはやさしいのに顔がこわいせいで友だちのできないサメ次郎。 ひとりぼっちの彼は、クジラ海の底で今日もポコポコとため息を泡に変えています。
そんな彼が拾った一通の手紙。 それはコンブ林に住むラッコ、プカプカさんのものでした。
どうしても、プカプカさんと友だちになりたい! がまんのならなくなったサメ次郎は、スヤスヤお昼寝中の新米配達員、ザラシーくんの配達袋に、こっそり返事を忍ばせるのですが——
シリーズ1作目『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』が2018年度ドイツ児童文学賞・児童書部門を受賞! “手紙”ではじまるクジラ海の物語、第5弾です。
手紙からはじまるクジラ海のあたらしい物語では、サメ次郎の友だち探しとはちがう、もうひとつ別の物語が描かれます。
その主人公は、新米配達員のザラシーくんです。 先輩であるベテランのアザラシ配達員が、実は自分あての手紙を受け取ったことがないと知ったザラシーくん。 あこがれのアザラシ配達員のために、心をこめたプレゼントを用意します。 でも、あんまりよろこんでくれていないみたい?
そして、エピローグには前作までに登場した動物たちも大集合! 彼らが集まったのは、クジラ海での「手紙のあり方」を大きく変えてしまう「ある物」のためなのですが——? 電子メールの発明? いえいえ、もっとおおきくて、もっとワクワクするもの!
舞台がクジラ海の本巻ではありますが、じつは最後の最後に、意外な形で第1作目の「キリン」が登場しています! 見つけられるでしょうか?
たまにはスマホを置いて、大切な友だちのことを考えながら筆をとるのもいいかも。 そんなふうに思わせてくれる、かわいらしい一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
2001年に刊行されたシリーズ1冊目の『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のドイツ語版が、2018年ドイツ児童文学賞を受賞。ある日たいくつなキリンが書いた手紙により地平線の向こうに新しい友だちができ、その輪が広がっていくというユニークなシリーズの5作目です。顔がこわいのでみんな逃げてしまって友達ができない、サメのサメ次郎が手紙を書きました。気ままに旅をするウミガメのカメ次郎から話を聞いた「コンブ林のプカプカさんへ」です。その手紙はプカプカに届いたのでしょうか? 知らない誰かに手紙を書く、それはその人を知ろうとする気持ちにつながります。返事がくるまでの時間も、さまざま想像をふくらませて楽しい時間です。「世界はひろいよ。あなたのこと、わかってくれる人、必ずいます。」作者のはじめの言葉です。
SNSやメールの時代だからこそ、手紙の良さを感じますね。
昭和生まれの私は、やっぱり手紙っていいな〜と思います。
わざわざペンを取って書いてくれたんだ〜切手を貼ってポストまで出しに行ったんだ〜という手間がまた想いを感じるというか。
そして、サメって恐ろしい存在ですが、サメ次郎は気が小さいサメ。
そこがまたいいですね! (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子9歳)
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