ちょっと変り種の絵本をひとつ。「わくわくたべものおはなしえほん」というシリーズの中の一冊で農文協さんならではのおおらかなテーマ。これをまた大胆自由な作家、竹内通雅さんが描く事でとっても生き生き新鮮なおはなしになったようです。 表紙でひょろひょろっとしている妙な生き物、それがどうやらお話の主人公「おたねさん」。植物の種なのでしょうか?舞台はおたねさんのいる畑、大きな木や植物、色々な動物がそれぞれが楽しそうに暮らしています。そしてこの絵本の何よりの見所はなかなか普通は絵本に於いてスポットをあびることはないであろう「土」なのです。何だかむくむく不思議な力を秘めている様子。そしてその上で季節と共に移り変わっていく畑の景色が言葉少なでも迫力いっぱいに伝わってきます。はちきれんばかりのフレッシュな夏の野菜、激しい嵐、静かな冬。何かが生まれそうな土のチカラ・・・。 そんな空気を感覚で感じる絵本なのかもしれません。
春、夏、秋、冬。畑に訪れる生き物や植物の様子を描く。
2007年刊行。
特に説明はなく、絵を見て自分でいろいろ見つけたり、感じたり、考えたりして自由に楽しめる絵本。「おたねさん」が何者であるかはわからないが、なんとなくわかるような気もする。
私は、おたねさんは命だと思った。
映画「もののけ姫」に出てくる精霊のようなものに似ている気もする。
植物や小さい生き物の魂のようなものや、自然に存在する精霊のようなものが、私たちの畑にもいて(きっとどこにでもいるのだと思う)
作物や動物たちと一緒に暮らしているのだろう。
春夏秋冬の雰囲気が生き生きと伝わる。特に春の気持ちよさと、夏の爆発するエネルギーが楽しい。実りの季節が終わり、命が土に還っていき、眠って冬を過ごして、また春になって命が芽吹きだす。命のめぐりを誰でもわかるように、表現した壮大な作品だと思った。
この絵本は、何度でも見て楽しめる。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
|