食べ物の好き嫌いはありますか? どうしても食べられないもの、子どもだけでなく大人だって、なにか一つぐらいは心当たりがありますよね。
主人公の「たくま」はなすが嫌いです。理由は、苦くてぐじゅぐじゅしているから。給食でなすのメニューが出るときは朝から気が重くて大変です。なかなか食べ終えられずに、みんながあとかたづけを始めても、なすとにらめっこ。けれども教室を見回すと、体も声も大きくてちょっとこわいと思っていた「りょうくん」も座ったまま。わっ、仲間がいた! たちまち意気投合して嬉しい気持ちになる二人でしたが、次のなすメニューの日もやっぱり二人そろって食べられなくて‥‥‥。
そんな中、夏休みに入り、「たくま」はおじいちゃんとおばあちゃんの家に1週間お泊まりすることに。しかし、野菜を育てているおじいちゃんの家ではたくさんのなす料理が登場します。そこでなすが食べられないと告白した「たくま」とおじいちゃんの間でこんなやりとりが繰り広げられます。
「いつかきっと、そのときがくるから、むりに 食べさせちゃいかん。」 「そのときって?」 「おいしく 食べられるときだよ。いまは きらいでも、おいしく おもえるときが くるものさ。」 「ぼくにも くるかなあ。」
その後、おじいちゃんの畑で、なすの収穫を手伝ったり、なすの花を知ったり、なすのおかずの作り方を知ったり、なすについていろいろなことを知っていく「たくま」。はたして、なすを美味しく食べられる「そのとき」は本当にやってくるのでしょうか?
お話を書かれたのは、すず きみえさん。本書はデビュー作となるのだそう。どうしてもなすが食べられない「たくま」の気持ち。給食でなすのメニューが出る日は気が重くなる気持ち。なすの新しい発見に驚く気持ち。「たくま」のさまざまな気持ちが自然に描かれていて、作者の温かなまなざしがお話のあちこちから感じられます。今すぐでなくていい。ただ「そのとき」が来ることを前向きに信じてみること。信じることができたら「そのとき」は近づいてきていること。そんな考え方に大きく励まされる子どもたちも多いのではないでしょうか。
くすはら順子さんによる挿絵も、線のタッチがとても温かくて心地良く、特におじいちゃんの家で過ごす夏休みの光景がとても楽しそうに描かれています。2021年の課題図書低学年の部に選ばれている本書は、夏の読書にもぴったり。美味しそうな野菜の様子にも注目しながら読んでみて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
だれにでも きらいなものってあるよね。 きみは どう? ぼくは あるよ。 どうしても 食べられないもの。 「いまはきらいでも、いつかきっと おいしく食べられるときがくるさ」 って おじいちゃんは いうけど、 ほんとかなぁ。
タイトルにひかれ、手に取りました。
なすがきらいなたくまくん。学校の先生やお母さんは食べろというけれど、おじいちゃんは「その時」がくるから無理に食べさせてはいかんと言ってくれます。
私も小さい頃食べれなかったのに、今では大好きになっているものがいろいろあります。確かにその通りだなぁと思うけれど、子どもにはついつい「好き嫌いしないで」と言ってしまう私です。
こんなふうに子供に寄り添ってくれるおじいちゃんがそばにいたら、子どもは幸せですね。夏に読みたいお話でした。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子17歳、女の子14歳、男の子12歳)
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