こんなひとことから、幕をあけるこの一冊。 「きょうは これから、うしに のぼります」 ……うん、何言ってんの!?
「はんぶん ねているような うしが、のぼりやすいんですよ」 読者のとまどいをよそに、話は進みます。 「なぜのぼるのかって? そんなこと きいちゃあ いけません」 なるほど、それを言われちゃ、聞けません。
牛の毛をつかんで足をよじ登り、やっとこ着いた牛の上。 牛をのぼるというだけでもおかしいのに、そのひろい背中の上には、予想をさらに裏切る、奇妙な世界が広がっていたのです──。
牛をのぼるヒョウ。 牛の上の、牛の群れ。 背中に店を構えるめし屋。 ページをめくるごとに目に飛び込んでくる、シュールでヘンテコなツッコミどころ! 次のページも気になるし、読んだページも気になりつづける……。
またこの牛が、「ムカかわいい」というか、「イラかわいい」というか、愛嬌があるのに、なんとなくこちらを小バカにしているような絶妙な目つきで、いつまでもまぶたの裏にチラつく顔をしているのです。
なんやかんや、ようやくこの世界観にもなじみはじめた、というところで、旅は終盤。 しかし、牛から下山した最後のページに待ち受けるのは、読者の"慣れ"をもこっぱみじんに打ちくだく、衝撃的なオチ! これをツッコミいれずにスルーできるのは、鉄のように動じない心の持ち主だけです。
教訓? 意味? メッセージ? 楽しければ、それでいいじゃない! 読めば読むほどおかしみあふれる、牛をめぐる登山旅!
(堀井拓馬 小説家)
なんか気になる、へんてこりんな絵本
「今日はこれからうしに登ります。どのうしにしようかな?」 男は無事「うしとざん」ができるでしょうか。 つかんで ぎゅ! つかんで ぎゅ! 短い前あしの毛をつかんで登ります。 ようやくたどり着いたうしの背中には、なにが待っているのでしょう。。 うしに登って下りてくる、著者の魅力が詰まったへんてこりんな脱力ストーリー。何度も読むうちに、なんか気になって手放せない、そんな絵本の登場です。
【編集担当からのおすすめ情報】 何回読んでもニヤニヤしてしまう絵本が出来ました。 予備知識はなんにもいりません。さあみなさん、高畠那生の世界へようこそ。
「うしとざん」とは、どうやら 牛を登ることのようです。山を登るのが「登山」。では、牛を登るのはホントは「登牛」? でも、山のような牛を登るので「うしとざん」ということなのでしょう。
牛が大きいのか、人が小さいのか、よくわかりませんが、とにかく、牛を登るのは大変なんです。よいしょよいしょとよじ登り、牛の背では自転車を借りて移動します!そんな とんでもない、ありえない設定ですが、牛を降りるころには、すっかりその世界に入り込んで楽しんでいた私でした。
さて、これから「うしとざん」する人は、最終ページをよく見て、注意点を学習してから決行してくださいね!ナンセンスな楽しい絵本です。
(なみ@えほんさん 60代・その他の方 )
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