チェコの人々に親しまれ、語り継がれてきたおはなしを集めた昔話集です。 「チェコのグリム」と言われるカレル・ヤロミール・エルベン、女性作家のボジェナ・ニェムツォヴァーという2人の作家が書き残したものを中心に、短いものから長めの昔話まで、生き生きと編纂されています。 苦難の歴史を持つチェコに伝わってきた、骨太で、ちょっと不気味で、人々のユーモアやたくましさが感じられる、味わい深いおはなしが登場します。
訳者は、子ども時代の数年間をチェコで過ごし、後にチェコ語翻訳家となった木村有子さん。 おなじみの昔話はもちろん、木村さんの現在のチェコの友人たちの意見なども踏まえながら、丁寧におはなしを選ばれたそうです。
冒頭のとても短い、チェコらしい小咄「題名のないお話」で、「わたしの服には、ポケットが七十個もついています。そのポケットの中には、お話がひとつずつ入っているのですよ。さて、きょうはどのお話にしようかしら」と始まります。
次もまた、短い詩のような「小さないえがあったとさ」。“○○があったとさ”“その○○はどうしたの?”“〜〜になっちゃった”と、行ったり来たりを繰り返す、振り子のようなリズムが心地いい! いよいよ3つめ「オンドリとメンドリのお話」から、本格的に昔話がスタート。これはチェコ人ならば誰もが知るストーリーなのだそうです。
他にも、キツネの導きで王子が宝物を手に入れる表題作、切り株のあかちゃん「オテサーネク」、妖精にさらわれる子どもの話「スモリーチェク」、チェコ版河童伝説ともいえる「水の主ヴォドニーク」など、味わい豊かな物語がたくさんおさめられています。
挿絵は、チェコ在住の画家、出久根育さん。 異国情緒のある繊細なタッチが美しく、かつ、チェコの庶民のおはなしにふさわしい、素朴なユーモアのある線画もたっぷりで、ファン必見です。 不思議な力強さとひたむきさ、どきっとする不気味さがある、選りすぐりの24話をお楽しみください!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
苦難の歴史を持つチェコの人びとに長く愛される、知恵と勇気に満ちた昔話を集めました。独特のぶきみな雰囲気がただよい、深い味わいや骨太の面白さが伝わります。きつねの導きで王子が宝物を手に入れる表題作、切り株の赤ちゃん「オテサーネク」、妖精にさらわれる「スモリーチェク」など、選りすぐりの24話。
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