
この絵本は私がトウキョウサンショウウオを育てた記録をもとにかきました。 今はトウキョウサンショウウオの飼育や売買は禁止されています。 ではなぜ私がトウキョウサンショウウオを育てたのか、少しお話させてください。
私が住む町のはずれには、小高い里山があって、そこには畑や雑木林があり、たくさんの生きものたちが棲んでいました。その山を市民は南山と呼んでいました。 生き物が大好きな私は、小さな会を作って親子で自然巡りを始めました。40年近く前の事です。でも丁度その頃から、まちでは農地や里山の開発が進み始めました。 2001年には南山でも開発計画が発表されましたが、そこには希少種であるトウキョウサンショウウオがいたのです。 トウキョウサンショウウオは豊かな土壌と水辺の両方を必要とする里山を代表とする生き物です。トウキョウサンショウウオを守ることは、里山の多くの生きものたちが生きる環境を残すことにつながります。また、卵から大人までの生物の発生や成長過程を観察できる大変貴重な生き物です。 会ではそんなトウキョウサンショウウオを守るために、里山の地主さん達と何度も話し合い、自然調査に協力し、いろいろな提案を試みました。トウキョウサンショウウオの保護と飼育にも取り組みました。その経緯についてはこの本にも簡単に書かせてもらいました。
そして今、南山には新しいまちができ、自然は減ってしまいました。でも多くの市民グループが誕生して、残された里山でいろいろな活動をしています。私も南山の畑をお借りして農作業をしています。いつかまた大人になったトウキョウサンショウウオにここで出会える事を願いながら。 読者の皆様にはこの本を通じて、里山にすむ生き物たちに思いをはせてもらいたい、そして生命とは何か、どうやって育つのか、またどんな環境が必要かといったことを考えてもらえれば幸いです。
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