海辺の町イアリーは不思議な場所。夏はにぎわう観光地だけれど、冬になると濃い霧に包まれ一気に不気味な雰囲気に変わります。とくに冬の暗い海辺には、「マラマンダー」という恐ろしい魔物がうごめいているとの伝説があり、その海は「魔海」と呼ばれていました。
そんなイアリーの海辺の中心地に建つのが「魔海ホテル」。このホテルで忘れもの係を任されている少年、ハーバード・レモン(通称ハービー)が物語の主人公です。ある日、ハービーのところに、自分自身が「忘れもの」だというバイオレットという少女が転がりこんできます。バイオレットは12年前に「魔海ホテル」の部屋に置き去りにされ、それ以来行方不明の両親を探しているというのです。あつかっているのは忘れものだけで、人間じゃない、というハービーでしたが、いつの間にやらバイオレットのペースに飲みこまれ、わずかな手掛かりをもとに調査に関わる羽目に。 まずは、バイオレットが首から下げていたカードを手掛かりに「イアリー書方箋局」へ。ここは、好きな本を貸してくれる図書館とも好きな本を売ってくれる本屋とも違う、世界にひとつしかない、本の書方をしてくれるお店。つまり、本の方がお客を選ぶお店なんです。お店にいる機械仕掛けの不気味なサル「マーモンキー」もとっても気になる存在。この「イアリー書方箋局」の場面にはワクワクするところがたくさんありますので、ぜひ注目してみて下さいね。今回、バイオレットに渡されたのは「4-2-E-Pu-78」と書かれた1枚のカード。カードをもとに辿り着いた1冊の本が、バイオレットの両親の謎を解く大きなヒントとなっていきます。
この後も「シーゴル・ダイナー」「漂流物スタジオ」「漁師小屋」「イアリー博物館」など、さまざまな場所へ足を踏み入れるハービーとバイオレット。おてんばで危険を顧みずにどんどん行動するバイオレットの行く先はドキドキハラハラの連続! えっ、行っちゃうの? とハービーとともに何度思ったでしょうか。けれども町のあちこちを旅するように冒険が繰り広げられる様子は、読み始めたら止まらない面白さ! 本の最初に載っている「海辺の町 イアリーの地図」も見ながら、一緒にイアリーの町を冒険してみて下さいね。 さらに、登場人物が個性的で謎めいていて、誰もを気になってしまうのも物語の大きな魅力! ホテルのオーナーの「レディ・クラーケン」、イアリー書方箋局のオーナー「ジェニー・ハニヴァー」、作家の「セバスチャン・イールズ」、海辺で漂流物を集めている「フォッシルさん」、町の医者でもあり博物館の管理もしている「ドクター・タラシ」、バイオレットを追っている「フック怪人」、不思議な力を持つ?猫の「アーウィン」‥‥‥。はたして敵なのか、味方なのか。そして数々の危険な冒険を犯しながら、ハービーとバイオレットは、バイオレットの両親の失踪の謎にたどり着けるのでしょうか。また伝説の生き物「マラマンダー」との関係とは?
物語の作者は、イギリス版「ハリーポッター」シリーズのイラストレーターであるトーマス・テイラー。このお話で物語の書き手としての才能も開花させたのだそう。「ハリーポッター」シリーズのイラストレーターが書いている物語ということに話題性はありますが、それを知らなくても読み始めたらどんどん惹き込まれる物語自体に力のある作品です。それを証明するかのように英米では10万部を超えるヒットとなり、すでに20ケ国以上で翻訳出版されているのだそうです。
慎重だけれど面倒見が良く優しいハービーと、おてんばで冒険心旺盛なバイオレットの絶妙コンビ。この後も二人はどんな冒険を見せてくれるのでしょうか。日本でも期待の大型ファンタジー「イアリーの魔物」シリーズの幕開け。ぜひお早めに体験してみて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
ホテルの忘れもの係の少年が伝説の謎を解く
夏はにぎわう観光地、しかし、冬になると濃い霧に包まれ不思議なことが起こる海辺の町イアリー。魔物がすむという伝説のあるイアリーの海は通称「魔海」とも呼ばれている。 ある冬の日、この町の老舗「魔海ホテル」で忘れもの係をしている少年ハービーのもとへ、自分自身が「忘れもの」だと訴える少女バイオレットが助けを求めて転がりこんでくる。両親に会いたいという切実な願いと、おそろしい魔物マラマンダーの卵伝説が絡まりあい、物語は加速する。
気が弱いけれど正直者のハービーと、おてんばで賢いバイオレット。 絶妙コンビが町の伝説にまつわる謎と、自分たちの出生の秘密を解いていく冒険ファンタジー「イアリーの魔物」シリーズの第1巻。
【編集担当からのおすすめ情報】 イギリス版『ハリー・ポッター』のイラストを手がけたトーマス・テイラーが紡ぐ本格ファンタジーシリーズ。絵の才能だけでなく、こんな文才があったとは!と世界がおどろいています。 イギリスの児童文学新人賞<Waterstones Children’s Book of the Month>に選出され、発売されるやいなや10万部越えのブレイクし、20ヶ国以上で翻訳出版も決定。 映像的な描写で個性的なキャラクター達が躍動する本作は、映画化も進められています。
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