雪のふる小さな町。あったかい部屋で、男の子は友だちとちょうちょの図鑑を見ています。きいろ、あか、みずいろ、しろ、きれいなちょうがたくさん。ところが、友だちとひっぱりあってその図鑑を破いてしまいます。
「だいじな だいじな ちょうのずかん……とうさんのほん……」
男の子は頭がいっぱいになり、スキーをはいて雪の中をすべっていくと、途中でくぼみに落ちてしまいます。するとそこで、男の子は雪の中に灯りのついた小さな劇場を見つけたのです。引き寄せられるように眺めていると、劇場の中のおじさんが男の子を招待してくれると言います。目の前に広がっていたのは、ふわりふわりと静かに演じられる雪の劇場。華やかで幻想的なその舞台は、やがて舞い上がる雪でいっぱいになっていき……。
雪が生活の一部となっている町で育った荒井良二さんが描く、しずかで不思議な物語。冬になれば家のまわりの田んぼや畑は雪原となり、スキーをはいて自由にすべり、くぼ地にはまった時は、しんとした空間の中でじっとしていたと言います。細かく動く男の子の心情と合わせるようにコマ割りですすむ場面、そして美しくダイナミックにくり広げられる劇場の場面はどちらも魅力的。静かで冷たい外の空気感を感じながら読んでいると、ふと訪れるお父さんとの短くともあたたかい交流が、じんわりと心の中に染みいります。ホットココアを飲みながら読みたくなる一冊ですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
すてきな劇場の、幕が上がります
雪のふる小さな町。ある日友達と家で遊んでいた男の子は、ふとした拍子に父さんが大事にしていた本を破いてしまいます。男の子は、スキーを履いてひとりふらふらと雪の中に出ていき、途中でくぼみに落ちてしまいました。そこで男の子は、雪の中に小さな劇場を見つけたのです。 男の子のスキーの場面や、華やかで幻想的な劇場の場面は必見。 雪国の生活の中で起きた、不思議ですてきな物語。
【編集担当からのおすすめ情報】 雪国の子どもだった荒井良二さんの、すばらしい雪国の絵本ができました。 雪が生活の一部となっている町で起こった、父さんと、友達と、男の子のちょっとした出来事。その後の男の子の心情や、心地いい父子関係がよく伝わってきます。 かわいいコマ割りの場面から、見開きいっぱいにくり広げられる劇場の場面へのダイナミックな展開も魅力的。 雪がしんしんと降り積もる、とても清らかで静かな空気感と、華やかな劇場のにぎわい、1日の終わりにストーブの前で飲むココアのあたたかさを、ぜひ味わってください。
荒井良二さんの描く絵が、とても味わい深く魅力的な絵本に思いました。
私は雪国育ちではなく、現在もめったに雪の降らない地域に住んでいます。
雪国に住んだことない私に、雪国の雰囲気や感覚が伝わってくる絵本でした。
荒井良二さんは故郷を想いながら描いたのかも知れませんね。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子12歳)
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