山と山とにはさまれた町を一望する景観のただなかで、ひときわ、あざやかな色をはなつ赤い鉄橋。町のまんなかを通る千曲川を、上田電鉄別所線が渡るための橋です。
物語の主人公である「ぼく」は、家の窓からながめることのできる赤い鉄橋と、そこを通る別所線が大好き! 今日も別所線に乗って、赤い鉄橋を渡り、終点別所温泉に住むおじいちゃんとおばあちゃんに会いにいきます。
ちいさな旅のなかで、別所線をとりまく風景やその歴史にふれた「ぼく」は、いつか、別所線の運転士として赤い鉄橋を渡ることを夢見ます。
「ぼくが生まれる前も、お母さんが生まれる前も、おじいちゃんが生まれる前も、別所線はこの鉄橋を渡ってきたんだね」
それは、これからもずっとつづいていくはずでした。あの台風が、やってこなければ──
2019年10月12日、長野県を台風が襲ったその日、堤防が崩れ、落ちてしまった赤い鉄橋。美しい山間の風景と、そこを走る別所線の写真で、赤い鉄橋を愛した町の人々と、その復旧の物語を描いた写真絵本です。
空にかかる虹や、季節の花々とともに、鉄橋を渡る別所線を撮影した数々の写真がみどころ! 特に印象に残っているのは、画面の何もかもが白と青とに染まった田園風景、その雪と雲の世界を力強く横切る別所線を写した一枚。あまりにも幻想的で、思わず息を呑みました。 また、別の一枚。カメラに向かって日差しを投げかける太陽と、おおきな山々。宝石のようにキラキラと輝く水面の、千曲川。川をまたいですぐのところで途切れてしまった赤い鉄橋と、それを直すために働く重機やトラック。大自然と、そのなかで懸命に日々の営みを守ろうと奮闘する人々の対比が、印象的な光景でした。
愛敬たっぷりな別所線の車両と赤い鉄橋、それらと雄大な自然とのコントラストは、かわいらしくも力強い魅力にあふれています。電車好きの人におすすめしたいのはもちろん、きれいな景色や胸を打つ写真を目的に手に取っても、期待に応えてくれる作品です。
(堀井拓馬 小説家)
長野県上田市のシンボル的存在である赤い鉄橋は、地元の電車「別所線」が渡るがんじょうな橋だった。しかし2019年に長野県を襲った台風で一部が川に落ちてしまう。まちとまちをつなぐ線路が途切れ、復旧の見通しは立たない。そんな中地元の人々が応援のために立ち上がった。
表紙のきれいな写真が気になり、手に取りました。
長野県上田市、千曲川の上にかかる赤い鉄橋。台風で壊れてしまったこの鉄橋の復旧作業が、たくさんの写真で語られます。
この橋がみんなに愛されているということが伝わってきました。
再び鉄道が走るようになってよかったですね。実際に行ってみたいなと思いました。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子13歳)
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