逃げるか、とどまるか。極限状況で「自由」を求める人間の葛藤を描いた現代の寓話
砂丘へ昆虫採集に来た男が、女がひとり棲む穴底の家に囚われてしまう。退屈な日常から逃げ出そうとした男が、今度は蟻地獄のような砂の世界から抜け出そうともがく……。 教養を盾に部落の人間を啓蒙しようとする男の驕りと、生活のため繁殖のために男を引き留めようとする女の業。その対比と、しだいに砂穴での暮らしに順応してゆく男の変化をリアルに、飄々と、ときにアイロニカルなユーモアを交えて描写する人間観察の傑作。画学生時代から安部作品を愛読してきた漫画家のヤマザキマリ氏が、「自由」や「希望」の多義性に注目しながら解説する。
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