明治期に入り、衰退した茶道が、新時代の富豪たちにより復活を遂げる。同時に茶道具の収集熱が高まり、名品を誇示する茶事が盛行された。この茶事記録は,茶器の保存・研究、茶道史の発展に大きな影響を与えた。本書ではその実見記ともいえる貴重な史料を残した高橋箒庵(義雄)、益田孝(三井物産創業者)、原三渓(生糸貿易豪商)、根津嘉一郎(鉄道王)、井上世外(元老井上馨)、藤田伝三郎(藤田財閥創始者)、黒岩况翁(日本赤十字社社長)、平瀬露香(大阪豪商、源氏物語の平瀬本にその名を残す)などの足跡を追いながら、豪放にして耽美、痛快にして洒脱な近代数寄者の趣向とその精神を語る。
(内容紹介) 主人公高橋箒庵数寄者とは、高橋箒庵の数寄、革新と保守
明治の青年 明治維新後の茶道界、箒庵高橋義雄、福沢諭吉と『時事新報』、『日本人種改良論』、『拝金宗』、洋行する新人
数寄者の誕生 藤田伝三郎の執念、平瀬露香の茶、箒庵と号す、破天荒の数寄者、原三渓の登場、箒庵、実業界を去る、ライフ・ワーク
数寄者の茶会 茶の湯の羅漢たち、石黒况翁の茶、井上世外と金沢、光悦会の誕生、大入札会の盛況、音曲と能楽の茶の湯、住友春翠の茶、信楽大壺割りの茶会
数寄者の思想 近代数寄者の庭園観、近代数寄者の建築観、近代数寄者の懐石、『大正名器鑑』の誕生、仏教美術と茶の湯、高野山と護国寺、
おらが茶の湯――まとめにかえて―― 茶の湯は趣味、近代化と茶の湯
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