これまでは「軍事施設」中心で語られてきた城郭研究において、近年、研究の進展により、そもそも「城とは何か」という点が注目を集めています。 そこでキーワードとなるのが「祈りの場」「権威の源」としての城の姿です。本書は、充実の一途をたどる城郭研究の新たな潮流に注目し、城郭史を「陰陽道」「鎮守」「呪い」「祈り(宗教施設)」という観点から捉えなおすことを目的としています。 具体的には、石垣に使われる転用石について、従来は石材不足を補うといった実用面、または戦国武将が不信心であることの証左として語られることが多かったのに対し、本書では、転用石を逆さに積むことで「けがれの逆転」を意図しているのではないかとの仮説を立てています。 このように、築城に当たっての場所選びから普請・作事にいたるまで、中世の呪術的な意識と儀礼がどのように作用していたのかを読み解きたいと考えます。
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