この本は、複雑な重い障害をもって生まれたクシュラという女の子の“生”のたたかいの記録であり、その成長にかかわった数多くの絵本の物語です。 クシュラには、生後まもなく次々と異常が発見されました。絶望的な日々の中で、なおも両親は懸命に治療法を模索し、かすかな希望の光を見出しました。昼も夜も眠れずにむずかる赤んぼうとの長い時間を埋めるため、母親がはじめた絵本の読み聞かせに生後四か月のクシュラが強い関心を示したのです。 一人では見ることも物を持つこともできず、外界から隔絶されていたクシュラにとって、この時以来、本はクシュラと外界とをつなぐ輪となりました。そして、本によって豊かな言葉を知り、広い世界に入ったクシュラは、三歳になったころ、健常児をはるかにしのぐ得意の分野をもつに至ったのです。 本がクシュラの知能と言葉の発達に及ぼした影響にははかり知れないものがありますが、それ以上に重要なのは、本がクシュラに友だちを運んできたことでしょう。ほとんどたえまのない苦痛と不安にさいなまれていたクシュラの心の友となった本のなかの住人たちと共に、いまクシュラは、すばらしく前向きに人生を歩んでいます。思慮深く勇気ある人々と、その深い愛に応えた幼い子どもの、これは感動の記録です。 ◎エリナー・ファージョン賞受賞 ◎日本翻訳出版文化賞受賞
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