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“組織”の幹部から指令がきた。めずらしく重要な任務らしい。おれと同僚ははりきって旅に出た。ところがその先には…。ほかに14話。
『星新一ショートショートセレクション10』(理論社)。
表題作である「重要な任務」をはじめとして、15篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
いつもの巻より作品数がいささか少ないのは、ショートショートとはいえ少し長めの作品が入っているからだろう。
表題作の「重要な任務」が13ページである一方で、「過渡期の混乱」は21ページ、「出口」という作品は22ページある。
20ページを超えたからといって長くはないはずだが、「ホンを求めて」などはわずか5ページだから、収められた順に読んでいくと、あれ?長いなと感じてしまうのは奇妙だ。
ただ、やはり長いと(といっても20ページほどだが)読み応えはある。
今回の巻でなんといっても「過渡期の混乱」がいい。
これは未来に登場するキャンディー売りロボットをめぐる話。
このロボットから税金を取るべきかとか傷害事故が起こった時の責任とか、最後にはこのロボットに選挙権を与えるべきかと人間たちは右往左往する。その一方で、ロボットに向けて商売を始める人間も現れる。
物語のおしまいで、星さんはこう書く。
「ずるさという、人間だけの持つ天与の能力。これある限り、ロボットなど恐るるにたらずだ。」
最近何かと話題となる「生成AI」のことを思わず考えてしまう。
まさかこの作品のように「生成AI」に選挙権を与えるべきかなんてことにはならないだろうが、星新一さんがまるで預言者のように思えてきたりする。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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