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残雪という名のがんがいて
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投稿日:2025/02/23 |
藤岡陽子さんの『リラの花咲くけもの道』は、
幼い頃可愛がっていた愛犬の死ともにひきこもるようになった少女が
祖母の助けを借りながら獣医師を目指して北海道の大学で学びながら
命の尊さを気づかされていく長編小説で、
先頃NHKでドラマ化もされた話題作だ。
主人公の友人のひとりに、鳥が大好きな残雪(ざんせつ)という男子学生が出てくる。
彼の父は鳥類学者で、「残雪」という名前は児童文学者の椋鳩十(むくはとじゅう)の作品、
『大造じいさんとガン』に登場するかしこいがんの名前からとられたことになっている。
『大造じいさんとガン』はどんな物語なのか。
この作品は椋鳩十が1941年に発表したもので、色々は版で出版されている。
小学生の教科書に載っていたようで、それで読んだ人も多いかと思う。
その話を絵本の形にしたのが、この『絵本・椋鳩十 大造じいさんとがん』で
絵は多くの動物絵本を描いてきたあべ弘士さん。
ちなみに「ガン」の表記はここではひらがなの「がん」となっている。
狩人の大造じいさんとがんの仲間を率いる「残雪」という名のリーダーがんとの知恵比べの物語だ。
ある時はやぶさに襲われた仲間のがんと助けようと自身の命をなげうってでも戦う残雪の姿に、
大造じいさんはひどく心を打たれ、傷ついた残雪を保護して助けるようになる。
人間と鳥の関係ではあるが、残雪にリスペクトする大造じいさんの姿が潔い。
こういうお話を小さい頃に触れ、鳥類学者になりたいと
藤岡さんの小説に登場するような夢みる子供がでてきたらいい。
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「のはらうた」刊行40周年の記念絵本
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投稿日:2025/02/16 |
詩人工藤直子さんの代表作ともいえる『のはらうた』が刊行されて40年だという。
シリーズ累計の刊行数が100万部というから、
こういう作品をロングセラーというのだろう。
おそらく詩集としても稀有なことにちがいない。
だから、子供の頃に読んだ人も今やその子供、もしかしたら孫への贈り物になっているやもしれない。
どんな詩か。
工藤さんがこの世界のあらゆるものの気持ちになって、詩をうたっていく。
例えば、かまきりの詩「おれはかまきり」では、「かまきりりゅうじ」君がこんな詩をうたう。
「おう なつだぜ/おれは げんきだぜ/(中略)/かまを ふりかざす すがた/わくわくするほど/きまってるぜ」
きっとどこかで誰もが目にした生き物や風景を、
巧みにうたってみせたのが、工藤さんの『のはらうた』。
そして、その中から25篇の詩を選び出して、絵をつけたのが、
この『のはらうた絵本』。
絵(ここでは画となっています)を描いたのは、あべ弘士さん。
あべさんといえば、動物や自然の絵の全うさに定評がある絵本作家。
工藤さんの詩に絵をつけるとしたら、この人しかいないのではないでしょうか。
とっても贅沢な絵本。
「のはらうた」40周年の記念の一冊です。
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これは珍しい、絵本の上下本
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投稿日:2025/02/09 |
びっくりしました。
絵本に上、下の2巻本があるなんて。
それが、この『落語絵本 芝浜』なんです。
描いたのは、川端誠さん。
川端さん自身、上巻の「あとがき」に「上下巻に分かれた絵本なんて、聞いたことはありません」と
書いていますから、なんとも珍しい。
さて、落語の「芝浜」。
江戸にある地名、芝浜を舞台にした落語の有名な人情噺です。
ずっと前になりますが、立川談志師匠の「芝浜」は絶品と教えてくれた人がありました。
それくらい、落語好きには有名な噺。
あるところに酒好きの魚屋がいて、それが高じて借金まみれ。
おかみさんの小言も増えて、朝早く、商売に行きなって追いやられる始末。
朝早い芝の浜。(この朝焼けのきれいなこと、絵本の中でも秀逸)
魚屋は海の中で、50両もはいった財布を見つけます。
これで楽ができると、家に帰っておかみさんに事情を話してひと眠りしますが、
起きると、あんた夢でも見たのでは、とおかみに叱られてしまいます。
ここまでが上巻。
下巻では、心を入れかえて商売に励む魚屋の姿が描かれます。
そして、月日が流れ、ある時おかみさん白状します。
あの時の50両は夢なんかではなかったと。
最後のおちは、絵本を読むか、落語で聞くか。
川端さんは下巻の「あとがき」で、
「芝浜」は落語絵本を始めた時から作りたい噺だった書いています。
こうして、それが実現して、
おっと、まさか夢ではあるまいな。
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新作落語にもなりそうな
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投稿日:2025/02/05 |
『星新一ちょっと長めのショートショート8』(理論社)。
表題作である「長生き競争」をはじめとして、11篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
表紙のかわいい動物は、表題作の「長生き競争」に登場するモルモット。それに見えるどうかわかりませんが、和田誠さんのがんばりが感じるイラストです。
物語はこのモルモットに薬を与えて、どの薬が長生きに効果があるかを競合わせる話で、おしまいはそれを企画した男がこっそりと一番効く薬を服用していたという、ブラックユーモアが効いた話になっています。
この巻で一番面白かったのは、「半人前」というショートショート。
土建会社を経営しているエヌ氏が偶然知り合った青年を秘書として雇い始めると、工事現場で爆発が起こって足をくじいたり、自動車事故にあったりと、不思議と身の危険がたびたび起こる。青年のせいではないが、やっぱり気にかかるエヌ氏は青年に解雇を言い渡すが、なんと青年は半人前の死神であると告白。半人前ゆえに、死に至らせることができないという。
エヌ氏はこれを聞いて、青年をそばに置くことに決める。危険はあっても、絶対に死ぬことはない。何しろ青年は「半人前」の死神だから。
新作落語にもなりそうな、ショートショートでした。
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今日は節分です
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投稿日:2025/02/02 |
この『おにはうち!』、節分の日にぴったりの絵本。
幼稚園の園庭にいつもやってくる、小さな男の子。
名前を聞くと、「・・・にお」って答えます。
におくん?
園のお友達に誘われて、におくんも野球をして遊ぶことになると、
なんとにおくんの運動能力がすごくて、
どんな飛球もばっちり捕球してしまいます。
園長先生のところに飛んでしまったバットも、におくんの活躍で園長先生は無事。
ところが、そのあと始まった豆まきになると、におくんの姿が見えません。
園長先生は大きな声で、「おにはそと」といって豆をまきます。
そして、「いい、おにはーうちー!」って。
あれ? もしかして園長先生はにおくんの正体がわかったのかも。
におくん? おにくん?
中川ひろたかさん文、村上康成さん絵の、この絵本、
いいおにくんのことも思って読みたい一冊です。
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まんがで予習
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投稿日:2025/01/30 |
「まんがを読むと馬鹿になる」とか「大学生にもなってまんがばかり読んで」とか
昭和30年代や40年代にはよく耳にしたものだ。
あの手塚治虫さんの漫画も「有害図書」と非難されたこともあった。
それがどうだろう。
今やマンガ文化は日本の文化を代表するものになって、
一コマ漫画、四コマ漫画、ストーリー漫画にとどまらず。
この本のように「学習まんが」として伝記も扱うのだから
もし昭和30年代の大人たちが知ったら腰を抜かすのではないだろうか。
この「学習まんが」は2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」に合わせて、
江戸時代中期の「カリスマ出版人」蔦屋重三郎を描いた「伝記まんが」だ。
手っ取り早く、蔦重の生涯を知りたい人にはうってつけの一冊。
「いい大人がまんがなんて」と言う人はいないだろう。
だって、これ、「学習まんが」なんですから。
それでも不安のある人がいるでしょうが、
この「学習まんが」が太田記念美術館の日野原健司さんが監修していて、
最後のページにはちゃんと「参考文献」の記述までしている。
もっとも、子供たちには「吉原」という場所や「遊女」「花魁」といった
やっぱり大人の事情が関係する記述もあるから、大人の説明が必要かも。
もちろん、この本ではこういった言葉もページの欄外に短い説明が載っている。
大河ドラマが始まって、書店には江戸時代や蔦屋重三郎関連の書籍があふれているが、
この『学習まんが世界の伝記NEXT 蔦屋重三郎』は読みやすくて、
予習にはもってこいの一冊。
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次の世代にも伝わるように
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投稿日:2025/01/19 |
「贈られしひまはりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に」
これは、上皇さまが平成最後の2019年の歌会始に詠まれた歌で、
歌のなかにある「ひまわり」こそ、
この絵本『あの日をわすれない はるかのひまわり』で描かれた
阪神・淡路大震災のあとに神戸の被災地に咲いた花のこと。
皇居で花開いたひまわりは、
震災から10年の追悼式典の際に当時の天皇皇后さまご夫婦に贈られた種から育ったという。
この絵本は阪神・淡路大震災で犠牲となった、当時小学6年だった「はるか」ちゃんの姉である「いつか」さんや
その時に街のあちらこちらに種を蒔いた人たちへの聞き取り取材を得て、
フリーライターの指田和子さんが文を書き、鈴木びんこさんが絵を描いて2005年に出版されたものです。
阪神・淡路大震災は「ボランティア元年」と呼ばれてもいて、
この大きな震災をきっかけに日本ではボランティア活動が定着していきます。
この絵本では「ひまわり」の話もありますが、
ボランティア活動のこともきちんと描かれていて、
地震から二か月後、まだ体育館での避難生活をしていた受験生であった「いつか」ちゃんに、
あたたかいお弁当を差し入れてくれたボランティアの女性の姿も描かれています。
1995年に起こった阪神・淡路大震災から今年(2025年)で30年。
あの日のことを忘れないよう、毎年花を咲かせるひまわりと、
そのひまわりにまつわる話を描いた絵本が
いつまでも次の世代へと伝わることを願います。
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働き者の冷蔵庫に感謝
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投稿日:2025/01/12 |
家電の中で一番働いているのは多分、冷蔵庫だと思う。
何しろ彼(彼女?)は休みことなくずっと動いている。
なので、停電にもなればもう大変である。
格納されている食材はどんどん溶けるは腐るは、もう悲惨だ。
うっかり扉を閉め忘れた時も同じだ。
最近の冷蔵庫は扉が開いていると、ピーピー警告してくれるが。
笑いごとではない冷蔵庫にまつわる悲劇を、コミカルに描いてしまったのが
絵本『カチコチれいぞこだいさくせん』だ。
作者はユン・ジョンジュさん。韓国の絵本作家である。
夜遅くお父さんが酔って帰ってくるところから、この絵本は始まる。
お父さんの手には子供に買ってきたアイスクリームが。
でも、お父さんは酔っていて、アイスをいれた冷蔵庫の扉を閉め忘れてしまう。
さあ、大変!
アイスは溶け始めるし、いろんなものも右往左往。
でもなんとしても、アイスだけは助けないと。
冷蔵庫の食材たちが集まって、バタバタするのだが、余計に悲惨なことに。
カステラの上にアイスが転がって、そこで溶けてきて、まるでプールになっていく。
喜んで飛びこんだのはイチゴたち。
冷蔵庫のなかのみんなで作ってしまうのは、何だろう?
冷蔵庫はとても身近にある家電だから、この絵本に描かれていることは
とても親しみやすい。
いつも頑張っている冷蔵庫に感謝しつつ、笑いころげて下さい。
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面白いSF映画を観ているような…
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投稿日:2025/01/10 |
『星新一ちょっと長めのショートショート7』(理論社)。
表題作である「そして、だれも…」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
面白かったのは、表題作の「そして、だれも…」。
このタイトルで頭に浮かぶのは、やはりアガサ・クリスティーのミステリー「そして誰もいなくなった」だろう。星さんのこの作品の場合、「…」で意味深な感じを醸し出しているが、ここでもやっぱり「いなくなる」のだ。
ただし、舞台は宇宙空間を旅する宇宙船の中。乗っているのは、5名の隊員。そんな閉ざされた空間でありながら、突然隊長の姿が見えなくなる。残りの隊員が船内をくまなく探しても隊長は見つからない。そのうちに、また一人の隊員の姿も消え、さらにまた一人…。
結末も含め、まるでうまく出来上がったアメリカのSF映画のような作品。これは一読の価値あり。
その他、たった一人で小さな国家を作った男の「マイ国家」やいくつもの童話を巧みにつなげ合わせて抱腹絶倒の作品になった「なりそこない王子」もオススメである。
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へび年なのでへびの絵本を
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投稿日:2025/01/06 |
今年(2025年)は巳年。
つまりは、ヘビ年。
そんな年のはじめにぴったりの絵本を紹介しましょう。
『へびのニョロリンさん』。
文を書いたのは富安陽子さん、絵は長谷川義史さん。
へびといっても、ここに出てくるニョロリンさんは大蛇。
首をもたげると人間の背丈ほどもありますから、随分大きい。
でも、怖がることはありません。
このニョロリンさんはとてもおとなしい。
人は、ちがった、へびは見かけで判断してはいけません。
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