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第55回講談社絵本賞を受賞したクリスマス絵本
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投稿日:2024/06/16 |
第55回講談社絵本賞(2024年)を受賞したのが、
降矢ななさんの『クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし』です。
タイトルにあるとおり、これはクリスマスに読むのが一番いいですし、
刊行もそれにあわせた2023年10月ですが、
賞の発表が4月でしたからそこはがまんしましょう。
今回の受賞で初めて知ったのですが、
作者の降矢ななさんは中欧スロバキアで30年以上暮らしているそうで、
その地の風景や風習なりを絵本にして
日本の子どもたちに伝えたいという思いがあったそうです。
この絵本も、クリスマス前の街の広場で開催されるクリスマスマーケットで
軒を並べるお店とかそこで働く人たちや買い物に訪れる人たちを
とてもやさしいタッチの絵で表現しています。
物語はそんなマーケットに捨てられてい黒い子犬と
白い犬のぬいぐるみを持った女の子の心のふれあいを描いています。
この絵本が刊行された10月にはイスラエルによるガザ地区への攻撃があり、
降矢さんはとても心を痛めたそうです。
6月3日の朝日新聞にその時の思いをこう述べています。
「日常の幸せな気持ちを、今感じられるなら感じて、
それを失わないように私たちは生きていかなくちゃいけない。
日常を大事にして絵本をつくっていきたい」
スロバキアであれ日本であれ、
あるいは今も戦火のつづく世界の国にも
ごくあたりまえのように幸せな日常があればいい。
この絵本の裏表紙、女の子と子犬クロのあたたかなふれあいに心なごむ一冊。
クリスマスにもう一度、読んでみたい。
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韓国で「ママたちの育児書」として人気のあった絵本
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投稿日:2024/06/09 |
少子化がとまらない。
国は一生懸命多くの手当を支給し経済的支援に乗り出しているが、
少子化は単に経済的な事情だけではないと思う。
むしろ、子供を育てていくなかで心理的な支援が求められているのではないだろうか。
少子化は日本だけにとどまらない。
韓国でも事情は同じだ。
その韓国で、この絵本『またあえるよ』は「ママたちの育児書」として支持されたという。
書いたのは、1970年生まれのユン・ヨリムさん。(絵はアンニョン・タルさん)
描かれているのは、「分離不安」という感情。
子どもがお母さんの顔が見えないと不安になって泣き出してしまったり、
逆に親が子どものことが心配で目が離せなくなったり。
誰もが子育てをしている時に経験する感情だが、
それでももしかして自分は、あるいは自分の子どもは重症かもしれない。
つい、そんなことを考えてしまったりする。
そんな人たちに、この絵本は「だいじょうぶ。また あえるから」と
やさしく教えてくれる。
「ママたちの育児書」と称賛される所以だ。
それは「分離不安」だけでなく、
育児中に起こるさまざまな不安も少しだけ心をゆるやかにすれば
癒されることが多いことを示唆しているように思う。
そういう心の支援が整ってはじめて、少子化という問題は改善の方向に行くのではないだろうか。
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宇宙は広い、だから物語が生まれる
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投稿日:2024/06/04 |
『星新一ショートショートセレクション15』(理論社)。
表題作である「宇宙の男たち」をはじめとして、13篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
宇宙を描いた小説や映画やドラマはたくさんありますが、その中には宇宙空間で遭難する人間の話が出てくるのは、やはり果てのない空間に放り出される恐怖が並大抵ではないからだろう。
そういう恐怖とどう対峙するか、そのあたりが物語を生みやすくしているのでしょう。
表題作の「宇宙の男たち」もそういう類の物語です。
地球に帰還中のロケットに乗船している青年と老人。青年は操縦士で、長い期間宇宙で働いていた老人を連れ帰る役目を担っています。
ところが、そのロケットに隕石が衝突して、航行不能になります。
ここから二人のやりとりが始まるのですが、何か面白いオチがあるのではなく、静かな大人のドラマを見ているような展開となります。
ショートショートとはいえ、外国映画になるような仕上がりです。
「景品」というショートショートも面白い。
色々なお店で配布されるサービス券を景品に換えてくれる機械の話ですが、まるで現代の「ポイ活」(色々なお店のポイントを貯めて利用するポイント活動のこと)風景を先取りしたような内容で、こういった先見性もまた星新一さんの魅了のひとつといえます。
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サイの活用方法教えます
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投稿日:2024/06/02 |
絵本『おおきな木』や『ぼくを探しに』など
シェル・シルヴァスタイン(1930〜1999)の作品は
子どもだけでなく大人に広く読まれています。
シンプルな線ですが、シンプルゆえに多くのイマジネーションがわいてくるそんな作風が、
人気のもとなのではないでしょうか。
この『めっけもののサイ』も、まるで一筆書きのように
自由に線が躍動して、サイの魅力をいっぱい表現しています。
原題は「Who Wants a Cheap Rhinoceros?」。
「誰か安いサイいる?」ぐらいの意味だろうか。
それを「めっけもののサイ」という日本語訳をつけた、
訳者の詩人長田弘の言葉のセンスに脱帽します。
で、「めっけもの」という言葉、あまり耳にする機会は少ないかもしれませんが、
「掘り出し物」とか「思いがけない幸運」という意味があって、
この絵本の場合、後者の意味もあるように思えます。
だって、あの大きなサイを自分のものにできるのですから、
これは幸運というしかないでしょう。
この絵本にはサイの活用方法(?)がたくさん描かれていますが、
一番気に入ったのが「おばあちゃんのドーナツづくりのお手伝い」。
あのりっぱなツノにおばあちゃんがこしらえた生地を差し込むだけで
ドーナツのできあがり。
ちょうど、輪投げみたいに。
絵本を読み終わったら、どんなサイの活用方法があるか、
みんなで考えてみるのも、きっと楽しいだろう。
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忘れないことも確かな支援
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投稿日:2024/05/26 |
それは2024年(令和6年)の正月元旦の夕刻でした。
のちに多くの人が、なにもこんなにめでたい日に酷いことが起こらなくともいいのにと
声を暗くしたものです。
夕方4時10分に、石川県能登半島でマグニチュード7.6の大地震が起こります。
「能登半島地震」と呼ばれることになる大震災です。
この時期の北国の夕暮れは早く、どんどん暗くなる街に津波警報が出て、
日本中が正月気分どころではなくなります。
暗くなる街に大規模な火災が発生し、どんどん燃え広がる様が
テレビ中継されていました。
場所は石川県輪島の中心、朝市通り。
石川の観光名所のひとつでもあり、実際に訪れたことのない人でも
その名前だけは耳にしたことのある場所です。
翌朝、朝市通りの変わり果てた姿に誰もが声をなくしたと思います。
大石可久也さんが絵を描いた絵本『あさいち』は、
今回の震災後に作られたものではありません。
奥付を見ると、1984年4月に出版されています。
なので、もう40年前の絵本です。
焼けてしまった多くの店舗と通りの悲惨な姿から、
もしかすると輪島の朝市の賑わいも忘れかねません。
でも、この絵本には朝市の賑わいが、人々の笑いが、行きかう言葉があふれています。
文となる「かたり」は、「輪島・朝市の人びと」となっていて、
もうこれは記録映画のようでもあります。
この絵本に登場する人のなかにも
今回の震災で被災された人がいるかもしれません。
どうか、ご無事でありますように、と祈るしかありません。
被害にあった街や人たちへ色々な救済の方法があるでしょう。
具体的な救済ができなくとも、
この街の人たちのことを忘れないでいることもりっぱな救済です。
絵本『あさいち』は、そのことを教えてくれます。
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想像の翼を広げよう
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投稿日:2024/05/19 |
絵本はひとりの絵本作家が絵も文もつくって生まれることもあれば、
文と絵を別々の人が担って出来ることもある。
後者の場合、文と絵、どちらが先にあるのだろう。
それとよく似ているのが、楽曲の詩と曲の関係だろうか。
詩が先にあって曲がそれに合わせることも、またその逆で曲が先にできることもあると聞いたことがある。
絵本はどうだろう。
やっぱり文が先のような気がするが。
では、この『もしもねこがそらをとべたら』はどうだろう。
絵を描いているのは、自由な作画で多くのファンをもつ黒田征太郎さん。
文を書いたのは、「池上線」を歌ったシンガーソングライターの西島三重子さん。
絵本を読むと、やはり黒田さんの自由な絵がまずあるような感じがするが、
やはりこれは二人が共同で作りあげた作品だろう。
「もしもねこが空を飛べたらどうだろう?」、
そんなことからどんどん想像の翼が広がっていく。
「空を飛べたら小鳥をつかまえようとするんじゃないかな」
「もしもねこが花になったらどうだろう?」「それ、おもしろいね」みたいな、
そんな会話が聞こえてきそうな絵本だ。
だから。最後にある「そうぞうは いつか きっと ぼくたちに ちからを くれる」という一文が、すっと心にはいってくる、
それにしても、1939年生まれの黒田さんの自由な絵はどうだろう。
人間、こうでなくちゃ。
生きるって、こうでなくちゃ。
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今が旬のそらまめを味わいながら
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投稿日:2024/05/12 |
一口に「えんどう」といっても、食べるところによって少し違いがあります。
サヤエンドウは若どりしたさやを食べます。キヌサヤと呼ばれているのが、これ。
スナップエンドウはさやと豆の両方を食べ、
実エンドウは丸々と太った豆を食べます。グリーンピースがこれにあたります。
関西では「ウスイエンドウ」が有名です。
ただ見た目はよく似ていますから、それを描き分けるのは難しいと思います。
それでも、「そらまめくん」シリーズでおなじみの、
なかやみわさんはその違いをとてもうまく描く絵本作家といっていいでしょう。
なかでも、やはりそらまめの描き方が抜群。
大きなそらまめのさやを柔らかいベッドになぞられたセンスがあればこそ、
このシリーズがたくさんの子どもたちから人気を得たといえます。
この『そらまめくんとめだかのこ』も、そんな人気シリーズの一冊で
このなかでも「えんどう」たちのさやのちがいなどうまく描かれています。
大雨のあと、そらまめくんたちの遊び場だったところに大きな水たまりができます。
なんとその水たまりに川から流されてきためだかの子がいるではないですか。
そらまめくんたちは、めだかの子を川に戻してあげようと相談します。
でも、どうやって川まで運べばいいでしょう。
まめたちのさやに水をいれて運ぶことにしましたが、
さて誰のさやが一番いいのかな。
ここはやっぱり一番大きな、そう、そらまめくんのさやですね。
今がそらまめの旬。
おいしいそらまめを食べる時、そのさやにめだかの子がいないか
のぞいてみてはどうですか。
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いのちの息吹を感じる絵本
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投稿日:2024/05/05 |
この絵本の迫力は
高学年でも中学生、高校生でも多く感じることがあるのではないかな。
そして、なによりも田島さんが伝えたいことは、
おこめづくりが害虫などとたたかい、皆でたすけあって
ようやく収穫にいたること、
だから余計に人は収穫をたたえあい、よろこび、たのしむ。
そういう歓喜こそが、いきるという力を生み出しているということだと思います。
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星新一は本の妖精?
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投稿日:2024/05/01 |
『星新一ショートショートセレクション14』(理論社)。
表題作である「ボタン星からの贈り物」をはじめとして、13篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
いままでの巻より収められている作品が少ないのは、「午後の恐竜」という作品がちょっと長めのショートショートになっているから。
これはある日突然世界中に恐竜が現れるのですが、実態がなく、その不思議な現象に誰もが首をひねります。その一方で、水爆を積んだ潜水艦が行方不明となっていて、もしかすると世界中で起こっている現象は、人が死の直面に過去の人生を見るというものではないか、つまり人類は滅んで…。
ショートショート超えた、一級のSF作品として楽しめます。
また、表題作の「ボタン星からの贈り物」もうまいオチがついていて、ショートショートというのは物語の設定の巧拙もありますが、オチの切れの良さとも関係しているように思います。
思わずニヤリとするオチがあると、とても満足できます。
星新一さんがいつまでも人気があるのは、そういったオチの巧さにあるといえます。
この巻にある「友だち」という作品もいい。
小さい娘がどうも妖精と遊んでいるようだと心配する父親。父親には妖精なんかつくりごとだと思っている。相談を受けた医者の言葉。
「われわれは本を読み、そこから限りない知識と創造力を得ています。しかし、自分でその楽しみを味わう方法を、幼いころ、最初に手ほどきしてくれたのは、だれでしょう。」
誰のところにも、妖精はやってきていたのかもしれません。
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追悼・さとうわきこさん「ありがとう、ばばばあちゃん」
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投稿日:2024/04/21 |
絵本作家のさとうわきこさんが2024年3月28日、89歳で亡くなられました。
朝日新聞によると、
「1987年刊行の「いそがしいよる」をはじめとした「ばばばあちゃん」シリーズ19作は、
累計394万部のロングセラーになった」とありました。
どこかでさとうさんの「ばばばあちゃん」の絵本に触れたことがあるかもしれません。
お母さんに読んでもらったかも。幼稚園の先生が開いてくれたかも。
あるいは、おはなし会で聞いたことがあるかも。
この『ことりのうち』も「ばばばあちゃん」シリーズの一冊で、読んでみると、
さとうさんのなんともいえないやさしい絵のタッチと
ばばばあちゃんや森の仲間たちの弾むような会話が心地いいことを
あらためて感じました。
森の仲間たちと書きましたが、彼らはきつねやたぬきといった動物たちでそれが擬人化されていて、
そういうあたりもこのシリーズの人気を高めているのかもしれません。
『ことりのうち』は、ばばばあちゃんの発案で
森の木にたくさん小鳥のうちをつくって、小鳥のこえを楽しもうというお話。
ところが、そこにやってきたのが、とても大きな鳥で、その鳴き声といったら
耳が痛くなるくらい。
はて、この鳥はどこからやってきたのかな。
季節は初夏。
愛鳥週間も近い。
木陰で小鳥のこえ聞きながら、さとうわきこさんの絵本をひらくのもいい。
空のかなたでさとうわきこさん、手をふっているのではないかしらん。
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