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都会のかたすみでひっそりと暮らす孤独な青年は悪魔のささやきに従い一通の脅迫状をしたためるが…。表題作を含む9編を収録。
『星新一ちょっと長めのショートショート3(理論社)。
表題作である「悪魔のささやき」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
一番面白かったのは「あと五十日」。
五十歳を過ぎたばかりの男のそばに突然やってきた、やせた陰気な男。
陰気な男がこうささやく。「あと五十日でございますよ」
それから毎日、陰気な男がささやく日数は減っていく。
男はそれまで何事もなく順調だった。仕事も、家庭も、自身の体力も。
この陰気な男は死神か? そして、毎日減っていく日数は?
これがもし自分に起こればどうするだろう。
子供たちならこのショートショートも楽しく読めるのだろうが、シニア世代ともなればつい自分のことのように考えてしまう。
恐ろしきかな、星新一。
もうひとつ、巻頭の「すなおな性格」も、シニア世代にとっては深刻な物語。
自分で何事も決められない男は、人生の岐路のたびに占い師の予言を素直に聞いて生きていく。失敗もすれば成功もする。占い師の予言のままに人生を歩んできた男は、これでいいのかと立ち止まり、そして向かった先は…やはり占い師。
星新一のショートショートは子供だけでなく、大人はより楽しめます。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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