河原三平は、カッパにそっくりな少年。つり舟の上で昼寝をしていた三平は、カッパに間違えられて、カッパの世界につれていかれたが・・・。
山奥の小学校に入学したカッパによく似たこどもの三平は、川で釣りをしに行った。小舟で居眠りしているうちにカッパに誘拐される。カッパの国では人間は殺さなければならない掟だが、珍しいということで動物園のような待遇で三平は飼育されることになった。三平の話す人間の世界に興味をもったカッパの長老は、息子を人間の世界に留学させることにしたが…
鬼太郎の漫画では都会が舞台になっているが、この話はド田舎の、今では絶滅危惧種に指定されてもよさそうなカッパを子どもたちが信じているような、極め付きの田舎。学校に行くのに片道4時間。徒歩でのんきに通学する三平は、それが大変なことだとは知らず、そんなものかと思って楽し気に口笛なんか吹いている。
モノを知らないということが果たして不幸なのか、幸せなのか。
三平は小学校1年生という設定だが、なかなか頭が良く、機転が利き、様々な困難を逞しく乗り切っていく。運も良いのだろう。
この話を読んでいると、何でも便利になって、いつでも世話をしてもらえる生活が果たして幸せなのか、不幸なのか、疑問に思えてくる。
三平は両親が出奔して、祖父に育てられ、どう見ても不自由な暮らしだが、人生を楽しんでいる。また三平の迷い込んだカッパの世界も文明という代物はなさそうだが、みんなそれなりに幸せそうだ。水木先生の作品は、ご本人が戦争や南方での体験をされている関係か、「人間の幸せとななにか?」という哲学が感じられる描写が印象的だ。
昭和生まれで、ド田舎育ちで、祖父母に育てられた…など物語の人物と共通項が多い私には、実に様々な楽しみどころがあり、考えさせられるところもあり、盛りだくさんの内容だった。
昭和を知っている大人が読むのと、田舎も昔の暮らしも知らない世代が読むのではだいぶ感じるものが違うと思うが、妖怪という共通の楽しみがあるので、どなたでも楽しめると思う。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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