ぼうやがお人形のカスペルを窓から投げて捨ててしまう。大好きだったのに。後悔して泣いて・・。わがままをしたことのある子なら、誰でも息をのんで聞き入ります。本当のハッピーエンドは悔悟や嘆息や自己嫌悪の果てにしかありえないのだという人生の基本が、さりげなく盛り込まれています。少しおませな年頃になると、膝に座りに来て読んでもらいながら「普通はお人形を捨てたら絶対、戻ってこないよね」なんて親に確認したりするのです。駄目親の私は「カスペルみたいに戻ってくるもん」とぽいぽい捨てられるのも困るしと思い「そうねえ、捨てないのがいちばん良いわね」なんて言ってしまうのですが、もう少し相手がおとなになったら、真剣に見つけたいものはどんなに不可能に思えてもあきらめてはいけないということ、いつか必ず見つかるのだということを、教えてやりたいとも思うのです。ひび割れた土器のような心にスープが注がれるような温かい読後感のある絵本。おとなにもおすすめです。 (ニールスさん 30代・その他の方 )
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