動物と話せるお医者さんとして有名な「ドリトル先生」シリーズの作者、ロフティングの著作に「タブスおばあさん」シリーズという他の楽しいお話があることはご存知でしょうか?
タブスおばあさんは100歳を超えるたいそう年をとったおばあさんで、田舎の小さな農場に犬のパンク、アヒルのポンク、豚のピンクといっしょに平和に暮らしていました。しかし、ある日農場の持ち主の甥だという若者がやってきて、おばあさんと三匹は農場の家を追い出されてしまいます。住むところをなくしたおばあさんは、「こまった、こまった」となげき悲しむばかり。そこで三匹はなんとか農場から若者を追い出しておばあさんを農場に戻そうと知恵をしぼります。水ネズミの王様や、ツバメの女王にも協力をお願いし、追い出し作戦を実行するのですが…。
犬のパンクとアヒルのポンク、豚のピンクのやりとりがまるで人間のやりとりのようで笑ってしまいます。パンクとポンクはとても賢く勇敢で、野宿を強いられたおばあさんのために、森の中に寝床や食事を準備し、安全な場所へおばあさんを連れていくのです。あれ、豚のピンクは…? まだ赤ん坊のピンクは、いつも食べもののことで頭の中がいっぱい。けれど、森で食べものを見つけたり、おばあさんが寝る時の湯たんぽという重要な役割を果たすんです。豚の湯たんぽ!温かくて気持ち良さそうですよね。
物語の中には、おばあさんが直接動物たちと話をする場面は出てきません。しかし、おばあさんのためならどんなことでもしようとする三匹の姿や、水ネズミの王様とツバメの女王の証言からおばあさんが「世界中でいちばん動物にやさしい女の人」ということが十分うかがい知れるのです。このタブスおばあさんもドリトル先生のように動物語が分かるのでしょうか?それは読む人のご想像にお任せしたいと思いますが、もしかしたらおばあさんと三匹の関係は、言葉なんてなくても、通じてしまうぐらい信頼し合っているのかもしれません。
住むところがなくなる、という大変な状況が描かれているにも関わらず、ところどころでくすっと笑ってしまうユーモアが散りばめられ、ほっこり温かくなるストーリーはさすがのロフティング。水彩とペン画で描かれたユーモアたっぷりの挿画も、ロフティング自らが描いた直筆のものだというから、なんとも贅沢な1冊ですね。お話の終盤で、犬のパンクがうしろ足で立ち上がって踊っている絵なんて見ているだけでとっても嬉しくなってしまいますよ。
寒い季節には夜ごと暖炉のまわりに座って、栗を焼きながら物語をするというおばあさんと三匹の動物たち。こちらのお話も、眠りにつく前に、子どもたちにゆっくり読んであげるのが一番ぴったりくる読み方ではないかと思います。もちろん大人の方が読んでもかなり楽しめますので、お茶でも飲みながらゆっくりとロフティングの物語世界へどうぞ。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
ロフティングの幻の絵本、直筆画でデビュー!! 『ドリトル先生アフリカへいく』の著者が書いた、100歳のおばあさんと動物たちとのあたたかな交流が心和む、ヒューマニティあふれる物語。本人直筆の絵──水彩&ペン画は、ともにユーモアセンスたっぷり!
表紙と最初をよく見てよく読んでから借りればすぐに同じ本だとわかったのですが、
ドリトル先生のヒュー・ロフティングのまだ読んでいない本かな?ぐらいの認識で
図書館で借りて読み聞かせをしたのでした。
読み始めて、「あれ?これって『もりのおばあさん』と同じじゃない」と思いました。
息子に読み聞かせした後で、家にある『もりのおばあさん』をすかさず読み聞かせしてみると、息子が
「あれ?同じ話じゃん」と言うので、そう「ヒュー・ロフティングなんだよ」と私。
息子が「ドリトル先生ね」と言うので、ああこの子作者名もちゃんとわかるんだと思いちょっと親ばかですが、感動したのでした。
それはさておき、そう『もりのおばあさん』と同じなのでした。
厳密に言うと出版社も訳者も絵も違うのです。
こちらは、絵もヒュー・ロフティングです。
こうなってくるとどちらがいいのかは、好みの問題にもなってくるのかもしれません。
光吉夏弥訳の本に傾倒している私としては、やはり光吉さん訳の本が、読み聞かせをしてもひっかかりがなくすらすら読めることもあり
好きです。
ロフティングが描くとこんな絵になるんだなあと思いつつ読むと、アヒルはカブガブ、犬はジップ、ブタはダブダブに、おばあさんはドリトル先生に似ているなあなんて思いました。
そんな訳でわが家ではいろいろな意味でびっくりもし盛り上がった絵本でした。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子8歳)
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