第二次世界大戦後まもないヨーロッパ。腹話術師として旅をする若者フレディは、ある晩、ナチスの将校に殺されたという少年の幽霊と出会う。「この世でやり残したことを果たすのを手伝ってほしい」という幽霊の頼みに、フレディは…? 幽霊と孤独な若者のあいだに育つ友情を通し、戦争の傷跡と平和な世界への希求を児童文学の名手が描く、感動の一冊。
人として生まれてきた中で次の世代にぜひ伝えておきたいことというのがあるように思います。
それが作家や芸術家であるならこのことだけは作品にするまでは死ねないような強い思いを持った題材というのもあるかもしれません。
テレビを見ていて戦争を知らない子どももすでに66歳というのがありました。第二次世界大戦からすでに66年。
その現実を知る人が少なくなれば風化していくものでもあります。
表紙の明るさからは戦争ということは全く感じることができませんが、
この作品は、第二次世界大戦後のヨーロッパで腹話術師をするフレディという若者と少年の幽霊が出会うという話です。
その少年は、13歳になる前にナチスに殺されてこの世にやり残したことがあるのです。
読んでいる間、読み終わった後、ずーんとした重たい思いを引きずりました。
思い主題でありながら、ユーモラスな場面も盛り込んで重くならないようには書いてあるのですが、伝わってくるものはやはり重いのです。
作者のシド・フライシュマンはユダヤ系のアメリカ人だったそうです。
訳者のあとがきとしてホロコースト関連の児童書の紹介が載っています。
その中で上げられていた『マルカの長い旅』を私も読みました。
経験や表現力が熟成した時期に平和への祈りをこめた戦争を主題とした作品を描く作家が多いのは、
これだけは伝えておかなくては、風化させてはいけないという思いの表れでもあるように思うのです。
YAジャンルだと思いますが大人まで読んでいただけたらと思う作品です。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子9歳)
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