『第二音楽室』に続く“School and Music”シリーズはオルガン部が舞台。 ものごころつく前から教会の鍵盤に親しんだ鳴海は、幼い自分を捨てた母への 複雑な感情と聖職者としての矩(のり)を決してこえない父への苛立ちから、屈折した日々を送ります。 聖書に噛み付き、ロックに心奪われ、難解なメシアンの楽曲と格闘しながら、高3の夏が過ぎ、そして聖夜。 瑞々しく濃密な少年期の終わり。闇と光が入り混じるようなメシアンの音の中で鳴海がみた世界とは。(OY)
“俺は記憶のないころから鍵盤に触れてきた”。聖書に噛みつき、ロックに心奪われ、メシアンの難曲と格闘する眩しい少年期の終わり。18歳の少年が奏でる、感動の音楽青春小説。
佐藤多佳子さんの「Shool and Music」シリーズです。
これは文藝春秋さんから出版されているので、一見大人向きの小説のようにも見えますが、本の装丁や主人公の年齢を考えると、中高生向きのライトノベル(というとちょっとポップで軽い感じの小説に聞こえるので、あえて言うなら「思春期児童文学」?でしょうか?)という感じのジャンルだと思います。
ついでに言うと、最近の本のジャンルは幅があって、どっからどこら辺までが「児童文学」という垣根が低い気がします。
だからこそ、作れる話も読める話も幅が広がって楽しい面もありますけどね。(ジャンル分けが難しいです)
前置きはおいといて、
まず、素敵だな。と思ったのが表紙の装丁です。シンプルだけど、とても目を惹く素敵な想定だと思いました。
このシリーズは前から読んでみたかったけど、なかなか手にするまでに時間がかかってしまいました。
『聖夜』は全編“鳴海和也”という高3の男の子の話でした。
彼の心の奥深くに、静かに思く根をおろしている『母へのわだかまり』は、かなりどす黒いもので、最初は人格破綻者かと思ってしまいました。
物語が進んでいく上で、作者の得意分野の「音楽」がいい感じに絡んできていたし、
脇役の部活の仲間や、クラスメートの深井もなかなか味のある登場人物で、気が付いたらあっという間に読み終えていました。
思春期って、多かれ少なかれ、育ててくれた親や大人たちとぶつかる時期だと思うんですよね。
それをどうぶつかって乗り越えていくかで、大人になるための人格の再生が始まるのかもしれない。と、この作品を読んでとても感じました。
正直、全体的に「どす黒い」感じの話です。
好き嫌いは出ると思いますが、読んで損はない作品だと思います。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子11歳)
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