佐藤多佳子さんの「Shool and Music」シリーズです。
これは文藝春秋さんから出版されているので、一見大人向きの小説のようにも見えますが、本の装丁や主人公の年齢を考えると、中高生向きのライトノベル(というとちょっとポップで軽い感じの小説に聞こえるので、あえて言うなら「思春期児童文学」?でしょうか?)という感じのジャンルだと思います。
ついでに言うと、最近の本のジャンルは幅があって、どっからどこら辺までが「児童文学」という垣根が低い気がします。
だからこそ、作れる話も読める話も幅が広がって楽しい面もありますけどね。(ジャンル分けが難しいです)
前置きはおいといて、
まず、素敵だな。と思ったのが表紙の装丁です。シンプルだけど、とても目を惹く素敵な想定だと思いました。
このシリーズは前から読んでみたかったけど、なかなか手にするまでに時間がかかってしまいました。
『聖夜』は全編“鳴海和也”という高3の男の子の話でした。
彼の心の奥深くに、静かに思く根をおろしている『母へのわだかまり』は、かなりどす黒いもので、最初は人格破綻者かと思ってしまいました。
物語が進んでいく上で、作者の得意分野の「音楽」がいい感じに絡んできていたし、
脇役の部活の仲間や、クラスメートの深井もなかなか味のある登場人物で、気が付いたらあっという間に読み終えていました。
思春期って、多かれ少なかれ、育ててくれた親や大人たちとぶつかる時期だと思うんですよね。
それをどうぶつかって乗り越えていくかで、大人になるための人格の再生が始まるのかもしれない。と、この作品を読んでとても感じました。
正直、全体的に「どす黒い」感じの話です。
好き嫌いは出ると思いますが、読んで損はない作品だと思います。