個人的な話ですが、夫婦ともに築地市場に思い入れがあります。
主人が新卒で勤めた仕事先がまさに築地市場だったのです。当時受けたカルチャーショックはすさまじく、2年勤めて異動になりましたが、20年経った今でも忘れることのできない充実した日々を送ったようです。
私自身も独身時代築地駅近くのオフィスに勤め、ランチは毎日場外市場という時期がありました。
東京のオフィス街の片隅にある日常とははるかにかかけ離れた異空間。毎日が探検でした。外国人旅行者でなくても、日本の食文化には驚かされっぱなしでした。
その築地市場がもうすぐ移転します。さみしい気持ちと、仕方がないという複雑な気持ちが入り交じります。
モリナガ・ヨウさんの「築地市場」は、日本の食文化の豊かさと市場の熱気をそのまま伝える絵本です。
モリナガさんの「ジェット機と航空・管制塔」「新幹線と車両基地」「消防車とハイパーレスキュー」の3冊は、乗り物好きの息子の愛読書。緻密な挿絵と丁寧な説明は、幼児向け絵本を卒業した5歳の乗り物オタクをしっかり満足させてくれています。
この「築地市場」を拝見しますと、モリナガさんのお魚愛する心とその知識は尊敬に値しますし、あんな(!)忙しない場所でよくぞここまでという取材力と緻密な挿絵は、築地市場がなくなった際には、貴重な歴史的資料となるものと思います。
築地市場を写真で紹介した本は時々ありますが、挿絵だと必要なものがピンポイントで伝わり、子どもにもわかりやすい。小学校中学年からとありますが、夫の熱い語り付きで、我が家では5歳児も大満足。家族で社会科見学に行った気分になりました。