おばけのソッチ(女の子)は小学校1年生。クラスでは運動会では、みんながやりたい競争をやらせてもらえるということで、あれこれ意見を出し合った。競争2つと、応援合戦の演目が決まった。
しかしソッチはおばけだから、飛んだり消えたりしたら「ズル」になる。人間の友達と同じように、特殊能力を使わずに参加しなければならない。また、男子が女子を選んで二人で走って競争する「お婿さん、お嫁さん競争」も、気が重い。気落ちしたまま、運動会になるのを待っていたが…
小さい子どもの心の動きを、実に生き生きと写し取って描いている。
特に、「男子が女子を選ぶ競争」(今なら実行不可能だろうなぁ)では、かわいい子ばかり選ばれるから、自分は選ばれないのでヤダ、という女子がいたり、本番でも文章にはなかったけど、嫌な相手と一緒に走らなければならなくなった子が泣いていたり、なかなかの仁義なき競争。選ぶ・選ばれるということは、大人の世界でも容赦ない「婚活」、無間地獄の「就職活動」、などで誰もが(程度の差こそあれ)通る修羅場。
選ばれなかった側の切なさ、苦しさを、見事に表現している作品だと思った。
人間、生きていると、子どもの頃から辛いことは、あるのだ。
私も、小学生の時、女子が「はないちもんめ」という遊びをしている時に、誰にも選ばれない子の悲劇を体験した。
「好きな人と2人一組になってください。」というグループ分けが恐怖だった、という友達もいた。誰にも選ばれなかったあぶれ者が寄せ集められて、修学旅行の班を作って一緒に行動しなければならない時もあった。…きりがないが、「選ぶ」「選ばれる」というのは、生涯、いろいろな局面で体験する容赦のないテストのようなものかもしれない。
大人になると、子ども向けの本でも妙に深読みできたりして、楽しい。現役の子どもたちは、この本からいったい何を感じるのだろうかな。