読み終えた時、丁寧に作られた、上質で静かな映画を見終わったような感じがしました。
年を重ねた郵便屋さんが、「ちいさなゆうびんやさん」と呼ばれていた時のことを、回想し、語ってくれます。
朝10時に出発し、夜7時まで、ずっと田園風景の中、また街の中を歩いて手紙を届けてまわるのです。あてがあっても無くても、みんなはお手紙を待っています。(子どもたちは、郵便屋さんからもらうキャンディやチョコを!)そして、郵便屋さんが街を通ることが唯一の気晴らしになる日もあるなんて、なんて静かな日常でしょうか。
みんな郵便屋さんに、とても親切です。ご飯や、飲み物をふるまってくれます。乗り物にも乗せてくれます。郵便屋さんは雨の日も風の日も、お手紙を届けてくれる大切な人なのです。
効率とは無縁の、今とはかけ離れた時代の話ですが、読んで、心安らぐ気持ちがしました。そこには、人と人との ふれあいがあるからだと思います。
画家は、一歩引いたところから郵便屋さんの姿をとらえ、デッザンしています。郵便屋さんの姿は景色の中の一部のようです。淡い色の静かな絵ですが、人々の暮らしや、郵便屋さんの仕事ぶりを雄弁に物語っています。