「はだし」という言葉で思いだすのは
1964年の東京オリンピックのマラソンで金メダルをとった、
エチオピアのアベベ選手。
その前回大会のローマで「裸足のランナー」として有名になった。
アベベをまねしたわけではないだろうが、
昭和30年代の小学校では、
運動会の徒競走になると、はだしで走る子が何人もいたものだ。
さすがに今ではそういう子どもも見かけなくなったし、
そもそも屋外ではだしになることも
海水浴とか水遊びぐらいしかないのではないか。
現代人は裸足で土を楽しむことを忘れてしまっている。
村中李衣(りえ)さん文、石川えりこさん絵の
絵本『はだしであるく』は、
裸足で歩くことを忘れた私たちに
裸足で歩くことの楽しさを思い出させてくれる。
畑ですいかを盗み食いしていたカラスを追いかけているうちに
はだしになった女の子。
雨あがりの畑の土はぐにゃりとしている。
はだしのまま、アスファルトの道へと追いかけて、
ちがった地面の感じはおもしろい。
公園の土や川のなかの感触、みなそれぞれちがう。
やがて、女の子は風の気持ちになったようにもなる。
大きく描かれた、女の子の顔の表情がいい。
絵本の魅力を感じとれる瞬間といっていい。
こんな絵本を読んだあとは、
そっとはだしになって、地球にふれたい気分になる。