今年(2023年)11月に、東京・江戸川区にできた文学館が話題となりました。
それが「角野英子児童文学館」、愛称は「魔女の文学館」だとか。
児童文学者である角野英子さんの代表作である『魔女の宅急便』からの愛称です。
角野さんは2018年に国際アンデルセン賞作家賞を受賞するなど
今や日本の児童文学を牽引する作家であることは間違いなく、
今回の文学館がこれからも長く子供たちの夢を育てるものであって欲しいと思います、
そんな角野さんが『魔女の宅急便』シリーズの挿絵も描いた佐竹美保さんと組んで
書かれた絵本が、この『ちいさな木』です。
絵本ですが、絵本というよりも童話という方がより近い感じがします。
自由にあこがれ家を飛び出してきた一匹の犬ゴッチ。
旅の途中の町はずれで一本のちいさな木と出会います。
「自分の好きなところに行く」というゴッチに、
ちいさな木のキッコは自分は木だから動けないと嘆きます。
ゴッチはやってみないとわからない、と励まします。
と、ちいさな木は根を抜き取って歩けるではありませんか。
こうして、ふたりの自由を求める旅は始まります。
さらに、岩だとか沼だとか、誰もが動けないと思っているものたちも
自由を求めて動き出します。
自分にはできないとあきらめてしまわずに、まずは動いてみること。
そうすれば、自分の好きなところにたどり着ける。
もしかしたら、角野さんにとっての「児童文学館」もそんな施設だったのかもしれません。
子供たちに励ましをくれる一冊です。