ドロシー・マリノは、1912年、アメリカ、オレゴン州のポートランド生まれ。
調べたら、今年(2011年)の3月12日に亡くなっていました。
98歳ですから、正に大往生というに相応しいものです。
この作品は、1962年の初版で邦訳は2010年10月。
亡くなる前の邦訳で、喜んで頂いたのではないでしょうか。
物語は、主人公のベンジーが、赤ちゃんの時の毛布が大好きでいつも持ち歩いているという設定で始まります。
この手の話は多く、アーサー・ミラー作の「ジェインのもうふ」を挙げた方が多かったのですが、私は、ケビン・ヘンクスの1994年のコールデコット賞オナー賞受賞作品「いつも いっしょ」が思い浮かびました。
ベンジーは、いつも毛布を持ち歩きます。
家にいるときは無論、幼稚園に行くとき、散髪をするとき、果ては歯医者さんで治療を受けるときも手放さないのです。
そんなベンジーの行為は、周りの人に理解されません。
唯一の理解者は、ママ。
パパは、少しだけ分かっているという設定です。
ある日、ベンジーは、出かけた先で毛布を忘れてばかり。
この日が基点となって、ベンジーは、毛布を手放すのですが、その描き方が絶妙です。
子供の成長過程を優しく見守るママの姿があり、それが自然な形で表現されています。
決して派手な作品でないのですが、全体を通して、親の立ち位置にたった視線で描かれているのが、親にとってはたまらないはず。
エンディングも、分かってはいるものの、納得できるものでした。
文章は長いし、絵も二色刷りのシンプルなものなので、読み聞かせには向かない作品かも知れません。
どちらかと言うと、子供との対話に一寸迷ったママ向けの作品と言えそうです。