戦争に関わる8編の話が収録されているのですが、なんとも生々しく響いて来るのです。
民話を多く手掛ける大川さんの戦争民話。
救いようのない話で、息苦しくもあるのですがそれぞれに心に響く話です。
標題になっている「おかあさんの木」は、戦争に出征する7人の息子のために植えた7本のキリの木の話。
こどもを思う母親の気持ちが痛いくらいわかるのですが、お国のために差し出した命とも思うのです。
一人、また一人と息子の戦死が伝えられます。
お母さんのキリに向かい話しかける切なさは心苦しいばかりです。
それぞれの作品が重苦しく、描かれ方は確かに民話です。
一気に読むより、一作一作立ち止まって味わうのが良いと思います。
それぞれに絵本だったら、もっとつらかったように思います。
収録作品
・ おかあさんの木
・ 火の中の声(空襲の話)
・ ぞうとにんげん(上野動物園の3頭のゾウの話)
・ ひろしまのきず(原爆の話)
・ つる(ソ連に抑留された兵士の話)
・ 父たちがねむる島(玉砕した島の兵士の最期)
・ あほうの六太の話(徴兵を逃れるた六太の狂気)
・ おもちゃ買いのじいやん(息子に死なれた父親の後悔と、戦争ごっこへの怒り)