私たちの生活に天気は欠かせないものだ。
毎日、晴れだったり雨だったり、暑かったり寒かったりする。今日は天気がないなんて絶対にない。
だからだろうか、いつものことながら今年の夏は暑かったのだろうか、去年はどうだったろうかと思い出そうとするのだが、思い出せない。去年まで遡ることもない。今年の夏はどうだったろう。
猛暑が記録的だった。いや、その前は雨が続いたような。猛暑がおさまったら、台風だらけ。いや、その前だって、集中豪雨で大変だったはず。
そんなあやふやな気分で、毎日を過ごしている。
それなのに、人と会ったら、まずは天気の話。「今日はいいお天気で」なんて。
天気の様を伝えるのは難しい。最近は映像があるから、強い風とか雨でもわかりやすい。台風ともなれば海岸に打ち寄せる波を映せば、台風だとわかる。
でも、文章にすればどうすればいいのだろう。
ゲリラ豪雨なんてどう表現するのか。一転にわかに曇りだし、たちまちのうちに大粒の雨が、なんて。
最近のニュースでは映像の早送り手法で、そのたちまち感を出そうとしている。
この絵本の作者アネット・グリスマンは「子供に対して、嵐を限られた言葉で的確に表現できるのは、詩だけだ」と語ったという。
だからだろう、この絵本は詩のように語られる。
広い農園に嵐がやってくる気配が、言葉で綴られていく。
「大きなカシの木の葉がゆれる/それは しずかにはじまった」。
これが、この絵本のはじまりだ。
いやあ、すごい嵐でしたね、で済んでしまう天気の話を、ここではゆっくりと「カシの木の葉」のゆれから見ていく。どんな天気であっても、最初に兆候があるだろう。
朝焼けを最初にみたのは、海に浮かぶカモメかもしれないし、夕焼けを感じたのは菜園のアリたちかもしれない。少なくとも、私たちではない。
そういう天気の移ろいを、この絵本は的確に誌的に描いていく。
そして、雷を「大地にとどろく100のたいこ」を表現する。
あなたなら、どう表現するだろうか。