2009年南米コロンビアの作品。
物語は、
故郷から遠く離れたこの町に
ある日 わたしたちは 辿り付きました」
という書き出しで始まります。
どうも、パパと私で引越ししてきたようなのですが、何と、周りにいるのは等身大の昆虫のみ。
人がみんな昆虫に見えるという設定なのですが、その絵がリアル過ぎて、ある意味衝撃を受けました。
昆虫好きなら未だしも、好きでなければ、とても直視出来ない作品かもしれません。
時間の経過とともに、わたしは、周りの昆虫達とも仲良くなっていくのですが、最後まで、昆虫は昆虫のまま。
絵本の世界の常道で考えれば、最後は、昆虫が人間に変身しそうなものなのですが、徹底しています。
一読しただけでは、中々理解が進まなず、グロテスクな作品と評価しかけたのですが、その背景を知ると、
また、衝撃を受けました。
この作品は、単なる引越ししたわたしの寂しい気持ちとか孤独感を描いた作品ではなく、難民として辿り付いたことがテーマとなっていたのです。
難民の現状を伝える作品として、国連難民高等弁務官事務所の支援を受けて、ラテンアメリカ各地で配布されているとのこと。
だからこそ、これだけ重々しい印象が拭えなかったのだと、納得できました。
わたしの心理を描写しているのですが、それは、単一民族である日本では到底想像だに出来ないことなのでしょう。
あまりに深刻すぎるので、ためらう向きもあるかも知れませんが、その手法は絵本ならではのものであって、素晴らしい出来栄えと言えると思います。
快作と言うに相応しい作品として、オススメします。