・いじめは人間奴隷化へのプロセス
・孤立化→無力化→透明化
いわさきちひろさんのほわっとした絵。子どもに向けたやさしい言葉。でも内容は胸の奥まで刺さってきます。いじめがどう大きく深くなるか。人間の卑劣さ。
精神科医の中井久夫さんが、ご自身の子どもの頃のいじめられ体験をもとにいじめの構造を丹念に分析し発表した1997年の論文『いじめの政治学』。それを子どもにもわかりやすいように書き直したのがこの本です。
「わたくしのように初老期までいじめの影響に苦しむ人間をこれ以上つくらないよう」と書かれている中井さんは1934年生まれ。なので、論文『いじめの政治学』の時点で63歳。この本の執筆時期だと80前後。子どもの頃にいじめられた辛さがその年齢になっても心の傷として深く残るんだ、ということを忘れずにいたいです。
具体的な対策方法は書いてありません。中井さんが「その場に即して有効な手立てを考え出し、実行する以外にない世界」と指摘する通り、いじめの数だけ対策の数があるからです。
ただ、この本に書かれている《いじめとは》を、大人はどれほど知っているのでしょう。それを知らずに目の前にあるいじめを解決に向かわせることはできません。まして「うちはいじめゼロです」という学校や学級の先生は「わたしはいじめを全くわかっていません」と宣言しているのと同じ。
大人も絶対に読むべき本だと思いました。学校の先生、教育に携わっている方、親、その他子どもに関わるすべての方々に。