このお話を知らない方がごく稀だと思います。
でも、最後にオオカミが死んで子ヤギたちが喜んで踊り回るなんて残酷!と思われる方もいらっしゃるのでは?
でも、これが大切なんです。
もちろん私は暴力が大嫌い。でも子ども時代…ごく幼い頃には勧善懲悪が大切な時期もあります。そして5歳半を過ぎた頃から、勧善懲悪ではない世界に入っていくのです。
その頃やっと、自分の力でおおかみにも家族があるのではないか?話し合っても解決はしなかったのだろうか?など表に現れない世界を想像していくようになっていきます。
そのためには、それまでの約5年あまり、毎日の生活の中で、大人から押しつけられた価値観(たとえそれが暴力を否定するという考える余地のないようなものであったとしても)から離れて「自由に自分の意見を持つことの出来るよう」配慮していく必要があります。そして、絵本などで勧善懲悪をしっかり体験していく。怖いけど、みんなで力を合わせて頑張れば悪いもの懲らしめることができるのだという確信を育んでいきます。母山羊と子ヤギという弱い存在は、自分たちの姿と重なって、こどもたちを励ましてくれます。
もちろん、園でのごっこに「開けておくれ子供たち、お母さんだよ」のセリフは不可欠です。ワクワクドキドキするこの絵本がこどもたちは大好きです。
この絵本には沢山のホフマン氏の愛情が注ぎ込まれています。彼の作品の大半は自分のこどもたち一人一人に描かれたものなのです。赤痢や猩紅熱など、その時代には命さえ左右する大病に冒された娘達に、母さんはきっとお前を守ってくれる。知恵と力で弱いやぎだってオオカミに勝てるのだから…というメッセージをこめて…。
3才頃からぜひ読んであげて下さい。絵をしっかり読み込んでいけば、テキストに書かれていないお父さん山羊の所在や、お母さん山羊の気持ちが分かってきます。