広島の原爆ドームが擬人化されて色々なことを語ってくれます。名前はドームくん。近くのバス停の名前へのちょっとした疑問、自分をつくりだしてくれた人のこと、生まれてからの出来事のあれこれ、自分がスカスカになってしまった8月6日のこと。原子爆弾の原子とは何?ウランの原子を割ってできたカケラはどうなるの?と。
コージさんの絵は、コージさんらしく個性的ですがドームくんの丁寧な語りに合わせて描かれているように感じました。そして大判の絵本のつくりがドーム君のゆったりとした語りと、細かく、そして大きく描きこまれたコージさんの絵を包み込んでいるようです。細かく描きこまれた町や人に説明やセリフはありませんが、アリのようにちっちゃく描かれた人からも絵が語っていることが伝わってきました。そして、人間が呼び起こした過ちの恐ろしさと同時に、空、川、緑、陽の光、夜空など自然の美しさも感じた絵本でした。
すでに終わった遠い過去の出来事としてではなく、今もこれからも私たちを脅かすウランのカケラについてドームくんは心配しています。100年以上ずっと同じところに立ってドームくんがその存在で伝えようとしているものを、正しくきちんと受け止めたいと思います。