父と船で暮らしていた少女ピッピは、航海中の事故により父を失い(行方不明)、船から降りて生活することになった。
父の遺産と、相棒のお猿のニルソン氏と共に、一軒家で暮らす少女の日常を描くユーモア物語。
初出:1945年。
日本語版:1964年(岩波書店) 2017年には第70刷刊行。
長年読み継がれている児童文学。
書名は知っていたので、一度読んでみたいと思っていた作品。
「世界一つよい女の子」という、挑戦的な表紙が素敵。
いわゆる普通の教育を受けずに、天真爛漫にすくすくと育った、元気いっぱいで素直な少女。発想がユニーク過ぎて、周囲の「普通の教育を受けたお利口な」人たちを驚かせまくり。
基本的に11話、全部が騒動で盛り上がって、全然予想がつかない結末を迎える。ジェットコースターに乗っているような読み心地。
原文も、ギャグや言葉遊びなどがあるらしく、日本語版にする時に、おそらく翻訳者が相当悩んだだろう名調子がいくつかあった。私は、掛け算九九を「竹さんのクツ」と聞き間違えるギャグが大好き。児童文学史上、燦然と輝く名訳だと、勝手に思っている。
この作品は、作者が自分の小さな子どもにお話をせがまれて、楽しいお話を語って聞かせたものを、まとめたものだという。考え抜いて作ったのではなくて、自然と出てきちゃったような感じかと思うと、作者は世界の子どもたちを楽しませる天命を生きたと思えてきて、素敵だ。
この子が成長しても、きっとこんな調子で破天荒な人生を歩み、世界の常識をぶち壊しながら、素敵に楽しく生きていくのだろう。ピッピが大人になった後や、ピッピの老後なども是非とも読みたい。
リンドグレーン先生、あの世でも原稿を書いて下さい。