北アフリカ、サエル地方の昔話から。
貧しい男が、命がけで悪霊の住む土地を耕して作物を得ようとするが、うっかり悪霊の習性を忘れて大惨事に…
貧困の世帯間連鎖を食い止めるべく、命がけで奮闘努力する男と、まるでコンピュータープログラムのように正確に増殖していく悪霊たち。現実の生活でも、この話と同様な経験をしている人は多いと思う。子どもが読むのとは違って、大人になってから読むと、人生が暗転していき、どんどん転落していく様子や救いようのない結末に暗示された将来の破滅が自分の身に迫ってくるようで、本気で恐ろしい。
親が貧乏だと、こどもも貧乏になる確率は高いという。
理由はまともな教育を受けさせられない、親類縁者の協力が得られない、親の影響で貧乏を無意識に学習してしまう、貧困生活の苦しみにより家庭内が荒れていく…など、いろんな要素があると思う。
だが、世の中には極貧の中に育っても、事業で成功して金持ちになっていく人もある。親の世代ほどひどい貧乏ではなく、そこそこの暮らしを実現させる子孫もある。
この経済的な差は何が原因なのだろうか?
物語の中では、うっかりやってはいけないことをやってしまって、大惨事を招く一家の姿がある。感情的になってちょっとした間違いをしでかしただけなのに、結果はあらぬ方向に向かうなんて、理不尽だとは思う。
しかし、世の中には、飲酒運転やギャンブルでの破産、薬物や人間関係のトラブルなど、最初はほんの出来心で行った行動によって、自分も他人も破滅させることもある。この物語は、外国の農村の昔話の格好をして、私たち現代人に自分の行う行為がどんな結末を呼び込むかを考えさせられる力がある。
やはりやってはいけないことや、入ってはいけない場所には、それなりの理由があるのだ。