この絵本、見れば見るほどに謎はふかまります。
そこにいるのはライオンだけでしょうか。
わたしは言葉を発するライオンよりも、
静かに、けれど強い意志をもってこちらを見つめてくる
視線の方が気になってしまいます。
彼らは意思をもつどころか、勝手に家中を歩き回ることが
出来るようです。
この話は確かに母親と子どもの心のズレを書いています。
が、この本自体が絵本が語ろうとしている内容という気がしてなりません。
内容ではなく、絵本全体が「それ」そのものなのです。
母親には勿論見えていないもの
子どもには当たり前の世界
こちらをみつめる木馬
窓から庭を見下ろすぬいぐるみ
微笑む人形
倒れたまま視線を外さないクマ
椅子にたおれる少女
そして、ベッドにはさまれたクマ・・・。
人形を主として見ていくと、
内容は一変、不気味で少し怖いものにも思えてしまうのです
もの言わぬものたちは、何を語ろうとしているのでしょうか
それこそがこの絵本の、親子の間にある真実だと思えるのです。