面白い本です。特に大人には。
一言で言うと、大人である主人公が、ある時、突然子どもになってしまい、自分の息子と童心に還って遊ぶという内容です。
細やかな心理描写と、それにぴったりの絵で、味わい深い絵本に仕上がっていると思います。
この絵本、絵本にしては珍しく、対象年齢「中学生以上」の絵本なのです。
どうりで大人にとって面白い絵本であるはずです。
私が気になるのは、この絵本を子どもに積極的に勧めて良いものかという点です。
確かに、部分的・表面的には、小学生位の子どもにとっても面白いと感じるシーンが多くあるでしょう。
基本的に、書物には年齢制限がなく、その世代毎に違った読み方があり、それで良いと思っています。
私自身も子どもの頃からつい最近まで、出版社の提示する対象年齢について気にしたことなとありませんでした。
ところが、この絵本の対象年齢が「中学生以上」となっているのには理由があると思います。
ひとつには、内容的に、大人の視点からの心理描写が多く、単純に大人の方がより深く楽しめる点でしょう。
そして、おそらくもうひとつは、皆さんも少し気になっている、ラストの性的なシーンです。
このシーンについて、子どもから質問されても、きちんと説明できる方は、それで良いと思います。
しかし、私はこのシーンを具体的に子どもに説明することができません。
ですので、私個人としては、この絵本は「大人の絵本」です。
良い絵本は世の中に、一生かかっても読みきれないくらい数多くあります。そのような環境の中、わざわざ大人向けの絵本を意図的に子どもに手渡すこともないと思っています。
こちらのレビューに同じような意見の方がいらっしゃならないことを少し不思議に思っています。
繰り返しますが、この絵本は星5つの良書だと思います。
しかし、「子どもといっしょに楽しむ本を選ぶ」という目的でこちらのサイトを利用されている方が多くいらっしゃることを考え、老婆心ながら書かせていただきました。
大人の皆さんにはとてもおすすめの本ですよ!