星野さんといえば、千葉県市川の人であり、クマに魅せられて写真を撮るために境地を訪ね歩いた写真家であり、魅せられたクマに襲われて生涯を終えた探検家である。
この本は、そんな星野さんが亡くなってからまとめられた遺稿集である。
遺稿集が絵本であるだけに、星野さんを好きな子どもたちには伝えられるけれど、かなり生々しい思いで読んだ。
星野さんの関係者の思いが絵本の構成に現れる。
文章には星野さんの思いがあふれているのだけれど、絵本のなかではつながりにかけている。それは、たぶん星野さん自身の意図とは別に星野さんへの惜別歌のようである。
最初に星野さんの奥さんが、星野さんと共にした日本の風景の断片を散りばめている。
主人をクマに襲われて喪いながらクマへの愛を絵本にすることにわだかまりもあったのだろうが、星野さんのクマに対する思いを形にすることが一番の供養だと思ったのだろう。
その写真とともに書かれている文章がすごい。
星野さんが子どもの日に、自分の過ごしているこの時間にクマも同じ時間を過ごしているのだと気づいたのだそうだ。
ふつうそんな感覚になる人なんていないだろう。
しかし、その感覚は星野さんにとって運命だった。
そこからの写真集は星野さんの追い続けたクマの生活。
クマの好きな大自然の風景。
クマを追い続けた星野さんのキャンプ風景。
最後の方にある写真のテントで星野さんはクマに襲われたのだろうか。
どちらにしろ、この絵本は星野さんの思いと、星野さんの探検と、星野さんが写し続けたクマの写真集である。
伝えるには重すぎる現実なので、子どもに何を伝えるか考えていないと星野さんに怒られそうである。