「どんなものでも何かの役に立つんだ。たとえばこの小石だって役に立っている。空の星だってそうだ。君もそうなんだ」。
これはフェリーニの名作「道」の中に出て来る有名なセリフです。
少し頭の足りない主人公の娘ジェルソミーナと出会った芸人の男が言うのです。
この芸人の男はこのあと彼女とコンビを組んでいたザンバノという荒くれ男に殺されてしまいます。
このザンバノは怪力の芸をする流れ者。ジェルソミーナは彼のそばで伴奏などをして観客からお金を集める役どころです。
昔は彼らのような旅芸人が多くいたのでしょう。
この絵本の主人公ジョバンニもそんな芸人です。
彼の芸は空中にさまざまなものを放り投げ、それをくるくる回したり、それを見事にキャッチしたりするもので、孤児だった彼はその芸で旅芸人の一座にはいり、次第に人気者になっていきます。
やがては町のえらい人の前でも芸を見せるようにもなります。
しかし、ジャバンニも年をとっていきます。
そして、今までしたこともなかった失敗をしてしまいます。
もう彼の芸を見ようとする人はいなくなり、彼はもとの貧しさに戻ってしまいます。
そして、あるクリスマスイブの夜、ひっそりとした教会で、何のささげものも持たない彼は最後の芸をマリアとイエスの像の前で演じて死んでいくのです。
古くから伝わってきた民話をもとに作者のパオラが自身の人生経験と重ね合わせて描いたというこの作品は、映画「道」で描かれたジェルソミーナの汚れない心の美しさと同じものを感じました。