絵本作家の絵は、いせひでこさんや酒井駒子さんのような端正なものから長谷川義史さんや荒井良二さんのような強烈なものまで、当然といえば当然だが、まさに個性が百花繚乱である。
クレヨン画の加藤休ミさんもその独特な世界観は他を寄せつけない。
そんな加藤休ミさんと落語家林家彦いちさんがタッグを組んだのが、この絵本だ。
原作が林家彦いちさん。林家木久扇に弟子入りして、めきめきと頭角を現した人気落語家。
タイトルにある「ながしま」は彦いちさんが小さい頃過ごした鹿児島県長島のこと。
本土と連なる町はそこに見えているが、船で渡らないといけないところで、「ちかくて とおい しま」だ。
彦いちさんが住んでいた頃、学校にはプールがなかった。でも、海があるから大丈夫。サメがでる(!)けど、先生が見張ってくれる。
給食の時間には漁師のおじさんが鯛の刺身を差し入れてくれる。
この刺身がすごくおいしそうなのだ。加藤休ミさんの絵がなんといってもいい。
信号がついたら、島じゅうのみんなが集まって大騒ぎする、そんなしまが「ながしま」。
彦いちさんの、そんな楽しい原作を加藤休ミさんが文と絵で絵本に仕上げた。
加藤休ミさんのクレヨン画が島の人たちの素朴な味わいとほとんど灯りのない夜の闇を見事に描いている。
そして、「しまからも まちからも どこから みても おんなじ まんまる まんげつ」も、いうまでもなく、ずっと見ていたくなるくらい、すてきだ。