角川文庫の『俳句歳時記 第五版』の「序」の冒頭に「季語には、日本文化のエッセンスが詰まっている」とあります。
つまり、ここでいう日本文化とは四季を愛で、季節を感じる心と考えればいいのではないかと思います。
地球温暖化で少し崩れかかってきているのではと危惧しますが、それでも日本には春夏秋冬という四季がはっきりしていて、そういう四季がもたらす情緒を大切にしているのは、しかし、俳句の世界だけではありません。
子どもたちが読む絵本の世界にも、四季を感じます。
絵本も四季から生まれる日本文化を大切に育んでいる創作といっていいと思います。
この絵本の作者村上康成さんは1955年生まれ。
小さい頃には魚釣りと絵を描くことばかりをしていたといいます。
アウトドアの魚釣りとインドアの絵。釣り合わないような感じがしますが、魚釣りをしながら季節を体感していたのではないでしょうか。
それが今の絵本づくりに生きているような気がします。
この絵本でいえば主人公のるるちゃんがどんぐりばやしでスカートいっぱい、どんぐりを拾っている姿や夕焼け空に飛び交う赤トンボとか、ページいっぱいに描かれていないけれど、その隅々に秋を感じます。
そういう体感って、やはり小さい時から自然のとなりにいないとわからないことかもしれません。
自然が少なくなっていますが、その分絵本の世界がそれを補っている。
この絵本を読んで、そんな気持ちになりました。