トニー・ディナルリッジは、H.ブラックの文による「スパイダーウィック家の謎」シリーズで2004年ジーナ・サザーランド賞を受賞。
「スパイダー屋敷の晩餐会」の絵で、コールデコット賞オナーを受賞しています。
2000年の作品で邦訳は2008年。
訳は、「ぼくとおとうさんのテッド」と同じく安藤 哲也さん。
言わずと知れたパパ’s絵本プロジェクトメンバーです。
原題にあるMOONPIEは、テネシー州チャタヌーガ生まれのお菓子。
マシュマロをグラハムクラッカーで挟み、チョコレートコーティングした物で、日本で言えばエンゼルパイのようなもののようです。
起源は、小麦粉精製所のチャタヌーガ・ベイカリーという会社が、1917年に炭鉱員の要望に応え、ランチに食べるスナックとして作ったもの。
名前の由来は、夜勤の炭鉱員にどの位の大きさがいいのかを聞いたところ、夜空に浮かぶ月を丸く手で囲み、「この位の大きさ」と言った所からムーンと名づけたんだそう。
ムーンパイは、人気が出て50年代に南部を中心に広がり、南部で有名なお菓子となり、アラバマ、ミシシッピー、ルイジアナ等の南部のお祭りの時に振舞われる定番となっているようです。
物語は、主人公のジミーが、ママに
「ミルクとムーンパイ、たべてもいい?」
と聞くシーンから始まります。
晩御飯が近いから、ダメといわれて、秘密の乗物に乗ったら、空に飛び出しムーンパイの王様=月に向かうのです。
この月の描写は、一見の価値あり。
こんな風に描かれた月は見たことがありません。
ここで、ムーンパイを1000個貰い、次に天の川=ミルキーウェイに向かいます。
ミルクも手に入れたところで、音の衝撃があって火星に落ちてしまい、今度は火星人との出会いがあります。
こんな奇想天外な展開の話なのですが、絵を見るだけでワクワクする冒険活劇です。
絵の発想自体が、子供のままというのが、この絵本の最大の魅力。
子供の頃、誰しもが憧れる話で、惹きこまれてしまうこと間違いありません。
有り得ないことを否定して考える年頃になる前に、是非読み聞かせして欲しい作品です。