ケニア出身の女性環境保護活動家のワンガリ・マータイの自伝の絵本。
彼女は、2004年に「持続可能な開発、民主主義と平和への貢献」のため、環境分野の活動家としては史上初のノーベル平和賞を受賞しています。
また、2005年2月14日から10日間、京都議定書関連行事出席のため来日した際、「もったいない」という言葉を知って感銘を受け、「MOTTAINAI」キャンペーを展開し、日本でも馴染み深い人物でもあります。
彼女の伝記の絵本は、「ワンガリの平和の木」と「ワンガリ・マータイさんとケニアの木々」があります。
特に、ジャネット・ウィンターさんの「ワンガリの平和の木」は、グリーンベルト運動と言う言葉に相応しい構図と、その課程で女性が生き生きと変貌していく様が平易に書かれていたことで、伝記とはかくありたいと高い評価をした記憶があります。
マータイさんは、ケニア山の麓の生まれ。
イチジクの木が、神さまの木とされていましたと書かれたページで、彼女が恭しく見上げるシーンが印象的。
その緑豊かな土地の絵は、広がりを持って見る者を楽しませてくれます。
20歳になり、アメリカの女子大に留学します。
先生たちが
「自分のことだけを考えるのではなく、もっと大きく世界のことを考えなさい」と説いたとあり、彼女の行動に大きく影響したことは間違いありません。
ところが、5年のアメリカ留学を終えて戻ってみると、村の景色は一変していたのです。
大地を農場とするために、木々が切り倒され、土地は痩せ、小川は枯れてしまっているのです。
彼女の目に映ったのは、昔大事にしてきたイチジクの木を切り倒してしまっただけでなく、生きていくために必要な土地を守ることすら忘れてしまった姿だったのです。
マータイさんは、責任を政府とかに転嫁するのではなく、出来ることから始めましょうと女性達に呼びかけます。
それは、苗木を植えること。
これが、グリーンベルト運動の始まりです。
多くの女性達に受け入れられ、苗木が育っていくシーンは、正に感動もの。
マータイさんが凄いのは、村々の学校にも苗木を贈ったり、刑務所の囚人や軍隊の兵士にまで、苗木を贈ったこと。
特に、兵士に向けて
「あなたがたは両手で銃を持っていますよね」
「でも、何を守るのですか?
風がふき雨がふると、この大地が失われていくのです。
銃は右手に持ち、左手には1本の苗木を持ちなさい。
そうやってこそ、よい兵士になれるのです」
との発言は、おそらく兵士の心の琴線に触れたのではないか?と思います。
この運動は、30年も続き、ケニアに4000万本の木が植えられたという結びで終わります。
訳者のあとがきにあるように、情熱と行動の人、マータイさんの若き日の心の成長と活動家としての人間像を浮き彫りした伝記の傑作だと思います。
マータイさんという人物を知ることは勿論、人として生きて行くにあたっての1つの指針となるような作品です。
是非 小学生に読んで欲しい作品として、オススメします。