第二次世界大戦後のフランス中部ビシーで、育った8才の少年アランが自分の生活を紹介します。
第二次世界大戦は1939年9月に始まりましたが、フランスは1940年6月には、ナチスドイツに敗北し、北部・西部をドイツに、南部をイタリアに占領され、ビシーは傀儡政権がしかれた比較的大きい都市です。
ビシーは、フランスの温泉保養地で、ホテルの数も多く、臨時の官庁・官舎として利用しやすかったのでしょう。
当時では超近代的な電話交換機があり、電話を介して全世界と連絡を取ることが可能な都市でした。
イワン・ポモーさんの絵が、当時の街並みや生活の細部まで丁寧に描かれていて、良く記憶されているなと感心しました。
もっとも、早くに戦線離脱し、戦火を免れ、写真やその他の資料もお手元にあったかもしれませんが、内戦もあり、きな臭い火種は、事欠かなかったかと思います。
本文は、そんな暗い時代の後、未来に希望を抱き始めているところから始まります。
生活の端々に物資不足や、復旧が不完全であること、また戦争での負傷を抱え生活している人、ビシー政府の苦々しい思いを口にする祖父など、戦争の傷跡がまだ生々しい時代だったようです。
8歳の少年の日常を、ユーモアを交え、少年の目線で描いているところが、とても魅力的です。
息子は、学校での、アランの「バツ対策」に大笑い、12月終わりのジョブ先生が描く黒板の絵に感動していました。
ものは無かったけれど家族や隣人、友人との密度の濃い心の交流が描かれています。
両親や祖父母から、戦中戦後の話は良く聞きましたが、他国の人々のこの当時の話を聞くのは、初めてです。
どこの国の人々も、必死で、「戦後」を終わらせ、今の時代を作ってきたことが解りました。