全体をとおしてパステル調の色が使われていて、やせっぽちなねこの前向きな姿勢とあいまって、悲惨な出来事でも読者は読み進めることができると思います。
それでも、やせっぽちなねこのがんばってきたきもちがはじけてしまうシーンでは、この先どうなるのかと心配になってしまいます。こねこの横を通り、駅へむかうひとたちの顔がかさでかくれてしまっていることが、ねこのこれからに対する不安感を高めます。
この絵本のすばらしいところは、こねこが良い人に拾われ、しあわせにすごしましたとさ、で終わらないところです。人間に発見され、自分のいることに気づいてもらえたことだけで、こねこは生きる力がわいてくるのでした。もうそれだけで十分なのでした。
人間も同じだと思います。大人も子どもも、自分の存在を認めてくれる人がいるから生きていけるのではないでしょうか。たくさんじゃなくても良いのです。誰か一人いてくれれば良いのです。
今の子どもたちはどうでしょう。「存在」そのもの、生きていてくれるだけで良いと、親は思っていてくれているでしょうか。そんなことをこの絵本を読みながら考えました。
蛇足になりますが、個人的には最後のページは必要なかったのではないかと思います。